ヤングケアラーを救え。介護を支えるという美談・美徳に隠れた児童虐待。

ヤングケアラーと児童虐待

介護の裏に潜む児童虐待

年末、何かと多いのが虐待に関する報道です。

先日、障害者虐待の報告や認定件数が発表されたことは記事にして紹介しましたが、高齢者虐待に関する件数の報道も行われました。

今回紹介したいのは、ヤングケアラーという問題です。

ヤングケアラーをただの美談にしてはいけない

先日、このような報道がありました。

介護を担っていたのは9歳長女。

読売新聞オンライン
祖父介護や家事担う9歳長女に暴行、父親に有罪判決…長女「毎日怒られ死にたいと思...
https://www.yomiuri.co.jp/national/20191225-OYT1T50076/
 当時9歳の長女を殴りけがを負わせたとして、傷害罪に問われた佐賀県内の無職の男(48)に対し、佐賀地裁は24日、懲役1年、執行猶予3年(求刑・懲役1年)の判決を言い渡した。杉原崇夫裁判官は「しつけを超えた違法行為。同じ犯

 当時9歳の長女を殴りけがを負わせたとして、傷害罪に問われた佐賀県内の無職の男(48)に対し、佐賀地裁は24日、懲役1年、執行猶予3年(求刑・懲役1年)の判決を言い渡した。杉原崇夫裁判官は「しつけを超えた違法行為。同じ犯罪を繰り返してはいけない」と述べた。

 判決などでは、男は10月22日、自宅近くの駐車場で、長女の顔や右足を殴るなどの暴行を加え、全治9日間のけがを負わせた。

 検察側は冒頭陳述や論告で、「長女は家事や祖父の介護などを担っていた。被告人は、長女が洗濯物を片付けていないことに腹を立て犯行に及んだ」と指摘。長女が「ほぼ毎日怒られ、死にたいと思った」と話したことに触れ、「人格を踏みにじる児童虐待にあたる」と主張した。弁護側は「深く反省している」として、執行猶予付き判決を求めた。

祖父介護や家事担う9歳長女に暴行、父親に有罪判決…長女「毎日怒られ死にたいと思った」|読売新聞

祖父の介護と家事を9歳の女の子が担っていたのです。

そして、その子の父親は、洗濯物がたたまれていないと長女を暴行し、顔や右足を殴るなど、全治9日間のけがを負わせたというものです。

長女は毎日怒られ、死にたいと思った、と供述しています

反省しているということで、執行猶予付きの判決になりましたが、こういった虐待行為が繰り返される可能性は高く、不安はぬぐえません。

ヤングケアラーとは何か

ヤングケアラーとは、介護や家事などを親に代わって行う子供のことを言います

今回の事件では祖父の介護がきっかけでしたが、それ以外にもきょうだいが障害を持っている場合にきょうだいのケアを行ったり、親が障害を負った場合に介護を行ったりすることもあります。

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身体的なケアだけでなく、炊事洗濯などの家事や精神的なケアを行う場合も含まれます。

家庭内で介護労働を行う精神的・肉体的な負担も伴い、学業や放課後や休日の余暇活動にも大きな影響が及ぶ場合もあります。それが継続すると、学校での遅刻や不登校、さらに非行などに発展する可能性も高くなり、成長段階の子供たちの精神面に与える影響は少なくありません

進学や就職という将来を目先にある介護のために失ってしまう深刻なリスクもあるのです。ヤングケアラーが失うものは非常に大きいと考えられています。

表面化しにくい、ヤングケアラー問題

そして、このヤングケアラーに関して、一番大きな問題は表面化しにくいということです。

親に代わってきょうだいや祖父母の介護をしている、と言われれば、周囲はどう思うでしょうか。

「偉いわね~」

それを美徳として受け取るのです。

本来、大人がするべきこと、もしくは対価を支払ってでもサービスを利用するなどして対応すべき肉体的・精神的な負担を子供に負わせているという現実があるにもかかわらず、それを美談にとらえるのです

日本人的な美徳として、介護を行って言うことを褒められたところで、果たしてその児童はどう感じるのでしょう

多くは「褒められたくてやっているわけじゃないのに・・・」という気持ちになるでしょう。

ヤングケアラーの多くは自分の意志とは無関係に、介護という呪縛に縛られているという現実があるのです。

なのに、SOSを発信する方法がなかったり、その状態が異常であることを確認する手段を持たなかったり、介護に時間を奪われてますます孤立を深めていくのです。

周囲の大人はもっと慎重にこの現実に向き合うべきだと思います。

最近、学校を休みがちになっている、忘れ物をすることが多くなっている、授業に集中できていない、友達とのトラブルが増えている・・・。

学校が必要以上に家庭の問題に踏み入ることはできませんが、児童相談所への相談なども含め、周囲の大人がヤングケアラーとなっているこどもを守っていかなければいけません

ヤングケアラーについて、平成30年度子ども・子育て支援推進調査研究事業として行われた調査結果がありますので、ぜひ目を通してみてください。

自己負担割合の変更、ケアプラン有料化。

本来、介護保険のサービスを利用する部分をヤングケアラーが行う。そのとき、ヤングケアラーの行う介護には報酬も発生しません。

介護保険のサービスを使えば、1割から3割の自己負担が発生し、ヘルパーやケアマネジャーなどが自宅を訪問することなど、人に見られたくない部分を見せなければいけない可能性もあるし、生活のペースを自分たちのスケジュールだけで進めることができなくなります。

そこで、こどもに介護労働を負わせるという場合もあります。

さらに、今後自己負担割合の引き上げやケアマネジャーのケアプラン作成に自己負担が発生するようになったらどうでしょう。

自己負担が高額になる介護サービス利用を控えて、こどもに介護労働をさせようという大人が増えることも考えられます

今回の介護報酬改定ではどちらも見送られましたが、今後の検討課題として引き続き検討することも付記されており、導入される可能性はまだまだ捨てきれません。

ヤングケアラーの問題は美徳というカーテンの影に隠れて表面化しにくい問題です。

様々な支援団体もありますので、そういった機関につないでいくことも必要です。

https://twitter.com/harashima_tokyo/status/1204117218952220675

余談ですが、うちの娘は10歳。自分からすすんで洗濯物をたたむことなんてないし、人がたたんでいるのを見てもなんとも思わないようですが、それはそれでどうしたものか。