ケアプラン有料化問題。一転「先送り」。居宅介護支援自己負担問題を整理する。

二転三転するケアプラン有料化案

このブログでも何度も紹介している「ケアプラン有料化問題」ですが、大きな動きがありましたので紹介します。

どこも「ケアプラン有料化」って言ってますけど、これ、実際は「ケアプラン有料化」じゃなくて「給付管理有料化」なんですけど、それはまた後程説明するとして、まずは今回の報道内容について紹介します。

 政府は19日、高齢者が介護保険サービスを利用する際に必要な「ケアプラン」(介護計画)の有料化を介護保険制度の改正案に盛り込まず、先送りする方向で調整に入った。介護費の膨張を抑えるため議論している制度見直しの焦点となっていたが、一律に自己負担を求めることに与党内から慎重論が相次いだため判断した。

 介護保険制度は3年に1度見直している。政府は年末までに内容を決定し、来年の通常国会に関連法案を提出する。

 ケアマネジャーがケアプランを作成する場合、誰もが公平にサービスを受けられるよう自己負担はない。費用は介護が必要な度合いによって異なり、保険料や税金で賄われる。

ケアプラン有料化、先送りへ | 共同通信

もう時期改定ではケアプラン有料化は決定的と言われていましたが、これが覆りました。

政府では次回の介護保険改正案にケアプランの有料化を盛り込まないという方向で調整しているようです。

これには胸をなでおろした居宅介護支援事業所は多いでしょうね。

逆に、これに不服なケアマネジャーがいたら専門職としての良識を疑います。

「有料化先送り」報道に至る過程

経団連はケアプラン有料化を提言

実はこの記事が出る前日には、このような報道がありました。

経団連は今回の提言に、居宅介護支援のケアマネジメントで新たに自己負担を徴収し始めることも盛り込んだ。「その専門性を評価する観点や、利用者のケアプランに対する関心を高めることを通じて質の向上を図る観点」から、現行の10割給付を改めるべきだと主張。ケアマネジメントを包含している施設サービスと整合性をとるためにも必要、とも指摘している。

経団連、介護の利用者負担の引き上げを要請 ケアプラン有料化も主張 | JOINT 介護

先ほどのニュース記事とはまったく反対です。

経団連は提言の中でケアマネジメントの自己負担を要求していました

これまでも社会保障審議会に参加する現役世代や経済界を代表する立場の委員からは居宅介護支援事業所(ケアマネジャーの所属する事業所)の自己負担導入を強く要求する声がありました

ケアプラン定額制論も

全国老人福祉施設協議会の桝田和平経営委員長は、「1割負担、2割負担といった方法ではなく、例えば月額500円など定額制の方が望ましいのではないか」との考えを示した。

ケアプランの有料化をめぐり対立 経済界が導入を強く主張 | JOINT 介護

ケアプラン有料化・全額保険負担という選択肢以外にも、第三の選択肢として500円定額制という案も出ていました。

この定額制のメリットもあります。

特定事業所加算を算定している事業所とそうでない事業所との間で報酬の格差が非常に大きいため、費用を抑えたい利用者は特定事業所加算を算定していない事業所を積極的に選ぶことが予想されます。訪問介護の特定事業所加算の金額とは比較できないほど、特定事業所になると報酬のベースアップが大きいのです。

報酬が安い方に利用者が流れる、質の向上の取り組みを積極的に行っている事業所には利用者が集まらないという逆転現象が起こる恐れがあるのです。
※利用者が集まるとしたら生活保護などで自己負担のないケースなどでしょうか。

その意味では定額制にすることで事業所の区分関係なく居宅介護支援事業所を選択することができるでしょう。

ただ、これを主張しているのが全国老人福祉施設協議会。介護サービスを提供する事業者団体としては、有料化に真っ向反対してほしかったというのは素直な意見です。

そもそもケアプラン有料化の何が問題か

今までも何度も紹介してきました。このケアプラン有料化問題。

介護保険改正のたびに俎上に上がり、先送りになってきたので、今回こそは避けられないのではないかともいわれていました。

そもそもケアプラン有料化の何が問題なのか

・利用者の自己負担が発生することで、相談や介護保険サービスにつながらないケースが増える。本当に必要なところに相談支援もサービスもいきわたらない状況が生まれる。

・居宅介護支援事業所には自己負担金の回収という業務負担が生まれる。

・自己負担があることで利用者の権利意識が高まり、いいなりケアプランが生まれ、適切なサービスやプランが導入できない

ケアプラン作成代行業者が生まれる。

ケアプラン作成代行業者について考えてみたいと思います。

ケアマネジャーの資格を持っていない人や介護や福祉・医療について全く無知な人が、ケアプラン作成代行業者を名乗り、セルフプランを行うという位置づけで、自社のサービスを限度額いっぱいまで突っ込み、給付管理票を提出するなんてことが起こりそうです。

どんなことが起こり得るのかを5年度の設定で、シナリオにしてみました。

ケアプラン作成代行業者の罠。ケアプラン有料化の先に

―――介護が必要になった高齢女性のAさん。独居で生活しているが、薬の管理ができなくなった。Aさんは介護認定を受け、その後、サービス利用を考えAさんの娘が地域包括支援センターに相談に行った。

面談する様子

Aさん娘「一人暮らしの母のために介護保険のサービスを利用したい。ケアマネさんを紹介してもらえないですか?」

包括「そうですか、でも今はどこのケアマネも手いっぱいで受けられないですよ。ケアマネやる人も少なくなってね。だって、介護職員の方が今じゃ給料高いからね。じゃあケアプラン作成代行業者に相談してみたらいいんじゃない(リストを渡す)」

Aさん娘「(・・・代行業者って何かしら。でも、まあいいか)連絡してみます」

帰宅後、Aさん娘、電話をケアプラン作成代行業者xにかける。

ケアプラン代行業者との電話

Aさん娘「あの、母が薬を飲めていなくて、それで包括に相談しに行ったらケアプラン作成をお願いできるって聞いたんですが」

相談員x「はいはい。薬飲めなくなったのね。んじゃ一日3回ヘルパー派遣しますよ。うちのヘルパーが行きますから、身体介護で。じゃあ、はい契約書、印鑑ある?(ドサッ)」

Aさん娘「あ、は、はい。でもそれっていくらかかるんですか?限度額あるって聞きましたけど」

相談員x「いやあ、ケアマネじゃなくて代行業者なんでそんなこと知らないですよ。初回訪問の時にサ責が行きますから、改めて料金説明しますよ、たぶん。オーバーしたら自己負担ですけど、まぁ。しょうがないでしょうね」

Aさん娘「そうなんですか・・・。それと、廊下に手すりをつけてほしいんですけど。住宅改修とか福祉用具って・・・」

相談員x「うちやってないんですよ。うちの会社のサービス以外は使えませんから。やっているのは訪問介護だけ。」

Aさん娘「・・・」

こうしてAさんは代行業者xが給付管理を作成し、訪問介護のサービスを限度額を超えるまで毎月使用した。費用負担が重くのしかかり、Aさん娘の家族の家計を圧迫し続けることになりました。Aさんはヘルパー不在の時間に転倒を繰り返すようになり、入院することになったとさ。

めでたしですか、めでたしでしたか?

介護保険制度には公正中立なケアマネジメントが必要

長々と書きましたが、要は公正中立な立場でマネジメントする役割を置かなければ、サービス事業所主導にサービスが調整されてしまうでしょう。

ケアプラン代行業者という、給付管理の作成を行うスタッフが置かれ、要介護度ごとの区分支給限度額いっぱいまで自分の事業所のサービスを突っ込まされることになります。

費用負担なしで給付管理をしてもらうかわりに限度額マックスまでサービスを使ってもらうということです。

結果的には、本当に必要なサービスを利用できない、自己負担費用だけでなく、給付費も膨らむ、さらに代行業者を規制する手段もない。もちろん、取り締まる法律もないし、違法でもないので、対応しようがありません

デメリットずくめです。デメリットしかない

なぜそこまでしてケアマネジメントの有料化を目指さなければいけなかったのでしょうか。

ケアプランを有料にする意味

ケアプランを有料化する意味、そんなものありません

単純に、介護保険サービスを利用している人が増えているから、給付費を削減できそうなところに目をつけているだけでしょう。

ただ、あまりそれを大っぴらに言うわけにもいかないので、それ以外のメリットも言うわけですが、どれもとんちんかんです。

費用負担が生まれることでケアマネの責任感が増す

これが一番良く言われるのですが、費用を利用者から直接いただいてケアプランをするということで、ケアマネの責任感が増してケアマネジメントの質が向上する、という意見。

バカですか?

費用を直接いただくのでちゃんとやります。そんな考えの人いますか?

社会人としてそもそもおかしいですよ。

じゃあ、行政窓口のサービス、全部有料にしましょうよ。窓口受付一回につき2,000円、責任感増して、多少はまともな窓口対応できるんじゃないですか?

警察の仕事も有料にしましょう。そうすれば責任感が増して警察の不祥事も少しは少なくなるんじゃないですか。

公立小学校も直接担任教師にお金を支払いましょう。いじめや体罰なんかもなくなり、まっとうなクラス運営ができるようになるんじゃないでしょうか。

直接お金を受け取るようになれば責任感が増すなんて詭弁でしかない

もっと悲しいことに、それに納得するケアマネもいるようで、そんな無責任に仕事をしているというのであれば即刻退場してもらいたい。

さらに、介護保険制度では所得によって自己負担割合が異なり、現状90%近くの人は1割負担ですが、2割負担・3割負担の人もいます。保険料未払いのペナルティを受けて4割になる人もいるかもしれない。さらに生活保護は自己負担ゼロです。

自己負担割合によってサービスに対する責任感が違うのであれば、3割負担の人へのサービスの質が高く、生活保護の人に対するサービスは低くていいのかっていう話にもなるでしょう。

介護保険サービスは自己負担の有無でサービスの質が異なっていたのか。生活保護の利用者に対する訪問介護は自己負担3割の利用者に対する訪問介護よりも質の低いサービスでいいのか

本当にそんなことでサービスの質が違ったのであれば、それはむしろ人権問題ですし、サービス事業所に対して失礼です。

こんなでたらめな理論で納得できるわけがないでしょう。

特養などの施設サービスにはケアプランの費用が含まれている。

つづいて、施設サービスとの整合性問題です。

同じようにケアマネジャーがケアマネジメントをしているのに、施設では自己負担があり、在宅では自己負担がないのはおかしいんじゃないかという意見です。

でも、施設のケアマネジメントと在宅のケアマネジメント、これをまったく同じにとらえていいんでしょうか。

施設では基本的なサービスを施設の中で完結しなければいけないので、外部の介護保険サービスの利用などもできません。なので、施設と在宅では一人のケアマネで受ける利用者の数の上限も異なりますし、ひとつのケアプランにかかる労力同じケアマネジメントであっても、行う内容は大きく異なります。

業務も違えば整合性もくそもないでしょう。

そもそもこれは「ケアプラン」有料化ではない。

そもそもの話ですけれど、これはケアプラン有料化という議論ではありません。

ケアプランを作っても報酬は発生しない

だって、ケアプランを作ったとしても、介護保険サービスの利用実績につながらなければ、居宅介護支援事業所は報酬を受け取ることができません。

介護保険サービスを利用する予定で、契約し、アセスメントし、サービスを調整し、ケアプランを作り、提供票や利用表を作り、サービス担当者会議でプランの合意を得て、あとはサービス利用日を待つだけの状態で・・・入院。

この場合、居宅介護支援事業所には一銭も報酬が入りません

ケアマネジメントの業務の大部分を行っているのに、です。

それはなぜか。

給付管理が発生しないからです。

介護保険サービスの利用実績がなければ、介護保険サービス事業者が報酬を受け取ることはできないのはもちろん、居宅介護支援事業所も報酬を受け取ることはできないのです。

ということは、この報酬は給付管理を行うことによってはじめて得られる報酬であって、ケアプランを作成することで得られる報酬ではないのです

「ケアプラン有料化」と言うけれど、ケアプランはケアマネジャー業務の中のごく一部であって、ケアプランを作成するだけでは居宅介護支援事業所は報酬を得ることはできないのです。

給付管理は誰のため

居宅介護支援事業所は給付管理を行うことで初めて報酬を得るので、ケアプラン有料化というよりも、「給付管理有料化」が正しいのではないかと思います。

じゃあ、給付管理って誰のため?

介護サービス事業所が行ったサービスの実績を確認し、照らし合わせるための給付管理票を国保連に送付する。

日本版ケアマネジメントでは、給付管理という業務を加えることで、サービス事業所による不正な請求をチェックする機能をケアマネジャーに持たせているのです。

つまりは、給付の適正化、保険者のため、国のための業務なんですよね。

国のチェック機能に対して利用者が自己負担をしなければいけないというのは、そもそもおかしい話じゃないでしょうか。

ケアプラン有料化は「見送り」ではなく「先送り」?

ただ、この議論。決着がついたわけではなく、あくまで先送りになっただけです

またその次の改正時には話題に上るでしょうし、ひょっとしたらまた話が二転三転し、次回改正に無理やりにでも押し込もうという動きが出てくるかもしれません。

でも、こんなめちゃくちゃな理屈で制度の根幹を揺るがすような改正を押し付けられるのは納得いきません。

ということで、このケアプラン有料化問題を整理してみました。先送りではなく、見送りになってもらえることを願うばかりです