特養「なのはな苑」で、入居者による殺害。施設の責任は?

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岡崎の特養施設 93歳女性暴行受け死亡

 17日午前6時45分ごろ、愛知県岡崎市福岡町、社会福祉法人明翠会の特別養護老人ホーム「なのはな苑(えん)」の3階の部屋で、入所者の○○○○さん(93)が頭から血を流して倒れているのを男性職員(29)が見つけ110番した。駆けつけた岡崎署員が、傷害の疑いで同室の無職の男(77)を現行犯逮捕。〇〇さんは頭を陥没骨折しており、搬送先の病院で午前9時5分ごろに死亡した。
 同署は容疑を傷害致死に切り替えて調べるとともに、施設側の管理に問題がなかったか職員から事情を聴いている。逮捕容疑では、男は○○さんの頭や顔などに暴行を加え、傷を負わせたとされるが、重度の認知症で容疑の認否も答えられない状態という。
 同署や施設によると、現場の部屋は約23平方メートルで、男と○○さんを含めいずれも認知症のある男女6人が布団を敷いて寝ていた。職員が午前5時半に部屋を巡回した時には異常はなかったが、午前6時45分ごろに再び部屋に入ると、血を流した○○さんの頭を男がゆすっていた。壁にも血が飛び散るような状況だったという。
 施設によると、男は昨年8月から短期入所を繰り返し、今回は14~17日までの3泊4日でショートステイ用の個室を利用する予定だった。しかし夜間徘徊(はいかい)があったため、事件当日は職員の目の届きやすい6人部屋で就寝させることにした。これまでに、人に危害を加えるようなことはなかったという。事件当時は夜勤体制で、入所者94人に対し職員5人が勤務していた。
 明翠会の太田進造理事長は「○○さんのご家族に哀悼の意を表すとともに、関係の皆さまにおわびします。今後二度とこのような事態が生じないよう細心の注意を払い、再発防止に最善を期す所存です」とコメントした。

入所者同士のトラブル、特に今回起こったような入所者とショートの利用者との間でのトラブルというのは珍しいことではありません

特に入所者側からしたら、ショートステイに来た人がその場の雰囲気や人間関係を壊してしまうことで、自分の居場所を失ってしまうというのは恐怖です。繰り返し利用しているショートステイの利用者に対してあまりいい感情を持っていないケースも少なからずあります。もちろん、口論などのトラブルになる事もあります。

しかし、それが殺人という形で現れるというのは予想し得なかったのではないでしょうか

入居者同士のトラブル、施設側の責任はあったのか?

施設での入居者同士のトラブルに施設の責任は?

さて、ここで考えなくてはいけないのが、施設側に落ち度があったのかどうかということです。

ニュースに掲載されている写真を確認すると、部屋は6人部屋で、何も仕切るものがなく、プライバシーについての配慮があるとは思えず、入居者の私物らしきものの陰も見当たらない。

入所施設というよりも、まるで合宿所のように見える。

で、加害者となった男性は個室を利用するはずだった。

それが、徘徊を理由に6人部屋に押し込められる形になった。

ここに、家族やケアマネへの報告や相談があったのかどうか。

6人部屋にすることで不穏などが見られることが予見できたのかどうか。

今後いろいろとわかってくる部分もあるかと思いますが、世間では高専賃だの無届ホームだのと質が問題にされていますが、特養もまだまだこういうところあるんですね。

追記:愛知県が施設運営法人に対して改善勧告

その後ですが、愛知県から施設運営法人である社会福祉法人明翠会に対し、改善勧告が出されています。記事紙面の情報を引用いたします。

岡崎の特養暴行死:県が改善勧告 市も措置 運営法人に定員超過で /愛知

 岡崎市の特別養護老人ホーム「なのはな苑」で女性入所者(93)が死亡した傷害致死事件で、県は4日、省令に違反し恒常的に居室の定員超過をしていたとして、ホームを運営する社会福祉法人「明翠会」に対し、介護保険法に基づく改善勧告を出した。市も同日、社会福祉法に基づき改善措置を講じた。
 同苑などによると、01年から定員2人の2室に最多6人、個室1室に2人の認知症の高齢者を寝かせていた。99年の旧厚生省令は「災害や虐待などやむを得ない事情を除き、居室の定員を超えて入所させてはいけない」と定めている。
 同苑は「夜間徘徊(はいかい)に当直職員がすぐに対応するための安全上の措置で、やむを得ない事情に当たると拡大解釈していた」と説明している。
 また同苑では今年1月以降、今回の事件で傷害致死容疑で送検された男が、最多5人の女性と一緒の部屋で寝たことがあり、県は「社会通念上、配慮が足りない」として部屋を男女別にするよう指示した。
 明翠会の太田進造理事長は事件後、初めて会見し「亡くなった入所者のご冥福を祈る。県と市の指導の下で適切な運営に努める。誠に申し訳ない」と陳謝した。

毎日新聞2011年11月5日朝刊

居室の定員をオーバーして入居させるという行為はこの事件の発生時だけでないことがわかりました。恒常的に居室の定員超過をしており、個室に二人の利用者を寝かせることや、女性5人の部屋に今回の事件で書類送検された男性利用者を寝かせるなどしていたこともわかりました。

施設側は「やむを得ない事情」と拡大解釈をしていたということですが、このような状態を恒常的に繰り返していたことに、誰も異を唱えなかったのでしょうか。また、行政やケアマネ等もこの状態を知ったうえで黙認していたのでしょうか。

追記:その後施設はどうなったか

その後に関してですが、岡崎市の社会福祉法人明翠会の「なのはな苑」という施設は「なのはな苑ふくおか」という名称に変更しているものと思われます。

ただ、現在は6人部屋はなく、「個室/42室 、2人室/29室」ということで、ショートステイを含めて個室と二人部屋だけになっているようですね。

改善勧告を受けてのことと思いますが、このように過去の反省を生かし、取り組む姿勢は素晴らしいですね。

今は施設で6人部屋というのはないと思いますが、多床室がすべて良くないというわけではないと思うんですね。そこに本人や家族等の同意があったか、もしくは本人にショートステイの利用石自体があったのか。そしてその背景を施設と共有できていたのか。

本人の思いや願いを大切にする支援を作り上げていくことが大切です。

※なのはな苑という施設はかなり多く全国にあるようです。神奈川県三浦市や青森県、千葉県千葉市、鹿児島県指宿市にもあるようです。今回の舞台となった特別養護老人ホームは愛知県岡崎市の「特別養護老人ホームなのはな苑ふくおか」となっています。風評被害などにつながりかねないのでご理解いただきますと幸いです。

記事編集・監修

 

介護福祉ウェブ制作ウェルコネクト

居宅介護支援事業所管理者・地域包括支援センター職員・障碍者施設相談員など相談業務を行う。

現在はキャリアを生かした介護に関するライティングや介護業界に特化したウェブ制作業を行う。

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