台風19号と災害対策。特別養護老人ホーム川越・キングスガーデン、職員・入居者全員避難とその背景。今後の課題。

川越キングス・ガーデン入居者職員全員避難の背景

台風19号列島を直撃。孤立する高齢者。

先週末、超大型で最強クラスの台風19号が列島を直撃しました。

堤防の決壊による水害では多くの被害が出ています。

これにより、多くの方が命を亡くされています。亡くなられた方のご冥福を祈るとともに、ご遺族の皆様には謹んでお悔やみを申し上げます。

現在も救助や捜索活動が行われています。

今回の台風で、孤立した特別養護老人ホームがテレビでも連日報道されていました。それが川越キングス・ガーデンです。

特別養護老人ホーム 川越キングス・ガーデン、入居者・職員が孤立。

越辺川が氾濫。川越キングス・ガーデン水没。

台風による増水により越辺川が氾濫。埼玉県川越市内で浸水。

川越キングス・ガーデンは孤立しました。

13日午前8時ごろ、埼玉県川越市の下小坂地区にある特別養護老人ホーム「川越キングス・ガーデン」が水につかったという通報が警察と消防にありました。

施設がある下小坂地区は、近くを流れる越辺川が氾濫して広い範囲が水につかっています。

川越市によりますと施設は建物が4棟あり、1階建ての2棟は水につかりましたが、施設にいた高齢者や職員あわせて220人あまりは2階建ての建物に避難して、いずれも命に別状はないということです。

NHK NEWS WEBより

 埼玉県では、県西部の越辺(おっぺ)川の堤防が複数の箇所で決壊し、流域の高齢者施設や住宅が広い範囲で浸水した。川越市では老人施設の利用者が一時、孤立状態になった。だが、職員が総出で高い建物に移動させたため、犠牲者は出なかった。13日朝から消防や警察が利用者をボートに乗せるなどして救助した。
 特別養護老人ホーム「川越キングス・ガーデン」の職員が浸水に気づいたのは13日午前2時ごろ。施設には当時、入居者ら約120人がいた。施設の介護福祉士正木一也さん(45)によると、ゴボゴボという音に職員が気づいた。「玄関などから水が入ってきて水位がどんどん上がった」
 20人以上の職員が総出で、移動に介助が必要な人を車いすやベッドごと平屋建ての棟から3階建ての別棟へ移動させた。水は平屋の壁の半分ほどの高さまで上がり、明け方には停電したという。
 渡辺圭司施設長(57)は救出終了後に記者会見し、「20年前の水害の教訓が生かされた」と話した。経験を教訓に避難マニュアルを作成し、避難用に3階建ての新棟を建てたという。渡辺施設長は「途中で停電となり、エレベーターが動かなくなったが間に合った。3階建てのおかげ」と語った。

朝日新聞より

特別養護老人ホームの利用者と隣接するケアハウスの入居者そして職員合わせて260人。浸水により孤立した施設から救助されました

20年前にもあった浸水被害

この地域一帯は以前から水害の被害も多かったようです。

地図を見ても、いくつかの河川の合流地点の近くにあることがわかります。

川越市のハザードマップでも5~10m未満浸水地域の中に川越キングス・ガーデンの場所も含まれています。

川越市水害ハザードマップ

特別養護老人ホーム川越キングス・ガーデンは20年前にも浸水し、その時の教訓が生きたと施設長は話しています。

垂直避難ができる二階建てのC棟を建設し、避難しました。

ANNニュースより

写真を見てわかる通り、A棟・B棟は屋根まで完全に水没しています。

写真ではその手前のC棟だけが浮いているように見えます。これはC棟の方が床が高く作られているためです。

さらに、二階に全員避難することができたということで、エレベーターも止まり時間の余裕もない中、混乱を最小限に抑えつつ、人力で利用者を移動させることがどれほど大変なことか。

職員の皆様の努力に頭が下がる思いです。

職員も利用者もいなくなる。でも、マニュアルは残る。

20年前の浸水を教訓にした災害対策マニュアル

ここで大きな役割を果たしたのはマニュアルの存在です。20年前の浸水被害をもとに作成したとのことで、ニュースなどでも紹介されていました。

20年も前です。特別養護老人ホームの入居者で20年前からその施設にいる人はきっといないでしょう。また、職員も20年前から勤務しているという人はかなり少ないんじゃないでしょうか。

利用者も職員もいなくなったとしても、その時に作ったマニュアルは生きているんです。

マニュアル作りはどちらかというと介護医療の現場職員からは敬遠されがちですが、これはずっと先の未来のための仕事だということもできます

実際、今回の水害ではマニュアルに基づいて行った防災訓練や避難誘導が全員避難という結果に結びついたのです。

まだまだ課題は山積

それでも、まだまだ課題は山積しています。

施設長の渡辺圭司さん(57)の案内で入ったのは、入居者が生活したり、事務室が所在したりする「A棟」と「B棟」。床には泥水が残り、油断すれば転びそうな状況だ。人の首元ほどの高さまで茶色に変色したカーテンのほか、棚や利用者の手押し車が流されて廊下に転がる光景に、渡辺さんは「ひどい状況です」と漏らした。
 施設は1カ月後の再開を目指しているが、「まず泥を出さなければならず、壁紙も張り替える」(渡辺さん)。車いすや机などの備品は産業廃棄物扱いになり、市で処分してもらえない。渡辺さんは処分のため、行政による財政支援を求めている。
 孤立化から脱した入居者約80人は、県内十数カ所の施設に移った。「各施設でよくしていただいているが、これまでと違う環境なので遠慮しているのではないか」と渡辺さん。
 片付けについては、「手伝いたい」という申し出があり、16日からボランティアを受け入れるという。渡辺さんは「たくさんの方に親切にしてもらっている。ありがたいことです」と感謝している。

産経新聞より

一か月後の再開を目指しているということですが、人が居住できる空間になるためには相当の時間が必要になるでしょう。

さらに、80名の利用者は別の施設に移ったということですが、新しい場所で知らない職員からのケアを受けることになります。

ケアに関する情報も十分に伝達できないため、職員も苦慮するものと思われます。

一日も早い復旧が期待されます。

台風の爪痕、各地に

停電・断水・浸水・営業中止

もちろん、今回の台風の影響を受けたのは川越キングス・ガーデンだけではありません。

様々な施設で停電や断水などの被害があり、また、交通機関が利用できずに職員が出勤できない施設や事業所、当日の業務をストップせざるを得なかった在宅サービスもあるでしょう。

結局、在宅介護の部分でも訪問介護ですら動けないという状況で、家族が負担せざるを得なくなるという状況も生まれていました。

ケアマネ試験が中止?延期?

また、東京都や首都圏(群馬県以外)では、13日に開催される予定だったケアマネ試験(介護支援専門員実務研修受講試験)が中止と発表されました。

受験予定の人のおよそ半数近くが中止や時間変更などの大きな影響を受けています。ただでさえ人数が減っているケアマネ。まだ中止分の扱いが発表されていないですが、どうなるのでしょう。

自然災害にどう向き合うか

今回の教訓を含め、介護施設・介護サービス事業所は自然災害とどう向き合っていくかを改めて問い直されていると考えるべきでしょう。

台風などの自然災害が到達する日の営業の可否判断や、出勤者の確保など、対応が後手になってしまっては、放置され、最悪の事態を迎える利用者が出てしまう場合も想定されます。

何を判断基準にする、いつまでに決定する、どこにどのようにして連絡をする、などを整備していくことで、不測の事態に備えることが重要です。

ぜひこれを機に災害時マニュアルの整備などを進めていくことをお勧めしたいと思います。


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