衆議院解散にともなう総選挙が行われます。
天気がだいぶ心配ですが、有権者の皆様は民意を国政に反映させる機会です。
介護報酬が低すぎる、待遇が改善しない、必要なサービスが受けられない。
介護の現場では様々な課題があり、それはもとをただせば社会保障政策によって大きく左右される問題です。
介護の現場にいる人は、問題意識をもって福祉社会の発展に貢献するべきであり、投票行動もその一つだと思います。
もっと早く更新するつもりだったのですが、主要各党の介護福祉関連の制作についての比較をまとめてみました。
この記事の目次
まずは各党の公約を
まずそれぞれの政権公約・マニフェストを確認してみましょう。
自民党
・介護人材の確保に向けて、介護職員のさらなる処遇改善を進めます。
・これらの施策を実行するために、消費税10%時の増収分について、社会保障の充実と財政健全化とのバランスを取りつつ、子育て世代への投資を集中することで、「全世代型社会保障」へと大きく舵を切ります。
・本年末までに、「人づくり革命」に関する2兆円規模の新たな政策パッケージを取りまとめます。
・同時に、財政健全化の旗は明確に掲げつつ、不断の歳入・歳出改革努力を徹底します。・消費税財源により社会保障制度を持続可能なものとするとともに、安定的な財源確保を図り、子供から、現役期、高齢期まで生涯を通じた全世代型の社会保障を構築します。
・国民皆保険制度を維持するとともに、病床の機能分化・連携の推進、在宅医療の充実、地域の医療従事者確保対策を進め、誰もが安心して受けられる医療の確保を図ります。また、地域包括ケアシステムを強化し、住み慣れた地域で「切れ目のない医療・介護」が受けられるよう、医療・介護サービスの体制整備を一体的に推進します。
・データヘルスを推進し、病気や介護の予防、重度化防止対策を強化し、医療におけるICT、IoT、AIの活用を進めるとともに、医師、歯科医師、薬剤師、看護師等の専門職の活躍を推進します。
・地域の実情に応じた介護サービスの整備や介護人材の確保を進め、介護離職ゼロを実現するとともに、認知症の方と家族を支援します。
介護人材の不足については処遇改善という方法でおそらく加算を条件付きで上乗せするということになるでしょうが、
基本報酬を下げることがすでに既定路線となったいま、
加算という場当たり的な上乗せでどこまで職員の待遇改善に効果があるのか。
どちらかというと、解散の際に明言していた、
消費増税で高齢者に向けられるであろう財源を子育て支援を含めた全世代型の社会保障というインパクトが大きい気がします。
希望の党
正社員で働ける、結婚できる、子どもを育てられる社会。
そこに少子化問題解決のカギがあります。・格差が極大化するAI(人工知能)時代を念頭に、基礎年金、生活保護、雇用保険等をBI(ベーシックインカム)に置き換えることを検討する。所得税増税と差引きすると、低所得者は給付増、高所得者は負担増となる。
・医療・介護・障がい福祉に関する世帯ごとの自己負担額を合算し、所得や資産に応じて定める上限額以上の負担額は公費で補てんする「総合合算制度」を導入する。
・遺伝子データ分析の飛躍的改善により、将来かかる可能性の高い病気を個人ごとに集中予防し、医療費を削減する。「フレイル」(疲れやすいなど体がストレスに弱くなっている状態)に早期対応できる体制を整備し、健康長寿を実現する。
・運転困難な方の移動の自由を保障するため、既に一部自治体で先行している「300 円タクシー」を全国規模で実現し、「移動困難者ゼロ」を目指す。道路予算をこの財源に充てる(道路より移動を)。
・高齢者の学び直し(セカンドラーニング)のため、100 歳まで学べる学部を創るなど大学での高齢者学生の受け入れを推進する。
やたら横文字が多い小池百合子の希望の党。
総合合算制度については、既存の高額療養費や高額介護サービス費と、それをミックスした高額療養費・高額介護合算療養費という制度があるのですが、
これに障がい福祉にかかる自己負担をくっつけるということですね。
低所得者の負担を軽減し、高所得者の負担を増やすという方針は現行の政権与党の方針と同じですね。
ベーシックインカムを導入したら、これまであった社会保障財源はベーシックインカムに充てられるわけですから、
介護や医療を必要としている方にとっては望ましいかというと疑問です。
公明党
・保育士・介護福祉士など介護従事者・障がい福祉サービス等の従事者といった今後の福祉人材の確保のため、賃金引き上げやキャリアアップ支援等の処遇改善や専門性の確保など総合的な取り組みを進めます。
・必要な地域医療介護総合確保基金を確保の上、介護職のイメージアップや参入促進など、介護人材のすそ野を広げる取り組みを進めるとともに、介護人材のキャリアアップのための研修等の支援を強化します。
・介護離職ゼロに向け、介護従事者の処遇改善や再就職支援、介護福祉士養成や学生等に対する支援などで必要な人材を確保します。
・保育人材や介護人材など潜在的な有資格者の再就業促進を図るため、福祉人材センターにおける支援体制を強化します。離職した潜在有資格者の登録制度の活用や再就職準備金の貸付制度、短時間正社員制度の推進などにより、再就業を支援します。・介護事業所等のICT化による業務の効率化、情報の共有化を進め、介護従事者等の負担軽減とサービスの質・生産性の向上を図ります。
・新たな機器の開発や見守りを含めた介護ロボット等の効果的な活用により、高齢者や家族等の負担を軽減するとともに、ロボット介護機器の海外展開を推進します。・誰もが住み慣れた地域で安心して老後を暮らせるために、医療、介護、住まい、生活支援サービス等の支援を地域の中で一体的に受けられる「地域包括ケアシステ
ム」の構築を加速します。
・地域医療介護総合確保基金を確保し、病床の機能分化・連携はもちろん、在宅医療の推進や介護分野との連携など、地域医療構想の実現に向けた取り組みを支援
します。
・2018年度診療報酬・介護報酬同時改定については、2025年の超高齢社会を見据え、地域包括ケアシステムの構築や、質の高い在宅医療や介護の充実、医療・介護
人材の確保を進めるため、必要な改定を行います。
・急増する高齢者のニーズに対応し、生活支援サービスなどを確保するため多様な担い手による地域の支え合いの体制づくりを進めます。そのため、地域医療介護
総合確保基金を活用し、各自治体の地域支援事業(介護予防・日常生活支援総合事業)の取り組みを支援します。
・高齢、障がい、児童等の対象者ごとに充実させてきた福祉サービスについて、多様化・複合化する地域のニーズに対応するため地域共生型の福祉サービスが必要と
なっており、それぞれの地域の実状を踏まえた地域包括型の支援体制の整備を進めます。
・誰もが介護者となりうる現状において、介護する人(ケアラー)が孤立することなく、あたりまえの社会生活を送れるよう、介護者を支援するための施策を総合的に
推進します。
・認知症対策を総合的に推進する「新オレンジプラン」の初期集中支援等を促進するとともに、若年性認知症対策に取り組みます・現在一部にとどまっている低所得高齢者(65歳以上)の介護保険料の軽減措置を、世帯全員が市町村民税非課税の高齢者全体に拡大する措置の前倒しをめざし
ます。合わせて、特に所得の少ない高齢者向けに実施されている負担軽減をさらに強化します
かなり長く書いてありますが、正直なところ、目新しい内容はありません。字ずらを見ればきれいですが。
現行の流れをそのまま推進していきますということですね。
[2018年度診療報酬・介護報酬同時改定については]と書いておきながら必要な改定を行いますと、具体的な内容はなし。
低所得者向けの負担軽減の強化ということで、保険料の軽減を図るようですが、
前回の保険料改定のときもそうでしたが、おそらくその分、所得のある人は保険料が上乗せされていくでしょう。
日本共産党
高齢者が安心してくらせる社会をつくります
・年金給付の充実を――減らない年金、頼れる年金を実現します
・後期高齢者医療制度の廃止、安心してかかれる医療制度へ
・介護保険制度の拡充をはかります
・高齢者の「住まいの人権」を保障します
・高齢者の就業・雇用の保障をすすめます
・安心・安全のネットワークづくりをすすめます
さすがに長すぎるので見出しだけにまとめましたが、介護保険制度については、このような記述もあります。
日本共産党は、介護保険の大改悪に反対し、特養ホームの抜本的増設による「介護難民」の解消、低所得者に対する利用料・保険料の減免制度の創設、介護報酬の引き上げによる介護・福祉職員の賃上げと労働条件の改善など、必要なサービスが受けられる介護制度への見直しをすすめます。利用料・保険料などの国民負担増を抑えながら、介護制度の抜本的改善をはかるために、介護保険にたいする国庫負担割合をただちに10%引き上げ、公費負担割合を60%にします。
報酬引き上げを明言しているのはわかりやすいですね。
特養待機者をなくすために、特養増設やサービス付き高齢者向け住宅利用者への負担軽減などを具体策としています。
障害者・障害児という項目の方がボリュームがあるのですが、こちらは応益負担なしを明言していますね。
読んでいるとおどろおどろしい文字が並ぶのでけっこう疲れます。
立憲民主党
生活の現場から暮らしを立て直す
保育・教育、医療・介護の各分野の賃金を底上げします。女性に対する雇用・賃金差別をなくします。社会全体ですべての子どもの育ちを支援します。将来的な国民負担を議論することは必要ですが、直ちに、消費税率10%へ引き上げることはできません。実質賃金の上昇によって中間層を再生します。
・保育士・幼稚園教諭・介護職員等の待遇改善・給与引き上げ
・診療報酬・介護報酬の引き上げ 医療・介護の自己負担の軽減
社会保障に関する内容は非常にシンプルですが、報酬引き上げを明言しています。
それ以外には具体的には何もないので書くこともないです。
急造政党ですが、震災のあったころの旧民主党のメンバーが中心になっていますので、
そのころの政権運営のイメージが強いかもしれません。
日本維新の会
・医療費の自己負担割合につき、年齢で負担割合に差を設けるのではなく、所得に応じて負担割合に差を設ける。
・診療情報の登録を推進し、ビッグデータの活用で医療費の抑制と医療の質の向上を同時に実現する。
・地域における医療と介護の切れ目ないサービス提供。がん患者の緩和ケアはじめ、わが家で療養できる在宅医療の基盤を整備する。
・医療等に関わる消費税制の見直し。
・臨床研究の不正が続発したことを受け、企業との癒着を排し、信頼回復と透明性、被験者の保護、研究の健全な発展へ法制度の整備を進める。
・特養待機問題等の介護施設不足を解決。ニーズを適時・的確に把握するため、介護サービスでの地方分権と規制改革を行う。
・介護と保育に関するニーズの変化に柔軟に対応するため、老人ホームと保育所を一体化させた複合施設の設置基準は、自治体が決定できるものとする
地方分権がやはりキーになる日本維新の会。
老人ホームと保育所を一体化した複合施設など、地域の実情に合わせて施設整備を進めるという印象です。
介護人材についての言及もないし、報酬についての言及もありません。
この辺は割り切っていますね。
社民党
憲法を活かした安心の社会保障
〇地域住民の目線を尊重し、関係機関の連携を強め、医療・介護・住まい・生活支援・福祉など、谷間のない「地域包括ケアシステム」を実現していきます。
〇介護保険外しや利用者負担の引き上げなどの「介護の自己責任化」に反対し、高齢者の尊厳が守られ、住み慣れた地域で安心して生活できる介護保険制度を確立します。利用者負担の3割負担の新設や、要介護1・2の生活援助サービスの介護保険からの切り離しを許しません。
〇計画的に特別養護老人ホームを増設し、入所待機者をなくします。
〇診療報酬・介護報酬のあり方を抜本的に見直し、医療難民、介護難民を防止します。
〇介護従事者の賃金の引上げなど処遇改善を図り、介護人材の養成、確保に取り組みます。
〇家族が自身の生活と介護を両立できるよう、介護休業制度の改正、「レスパイト(休息) ケア事業」(家族介護者の休養支援、要介護者の一時預かり等)などに取り組みます
3割負担導入や軽度者切り離しといった現行方針への批判と、介護報酬についてはあり方を抜本的に見直すという表現で記載しています。
日本のこころ
我が党は、医療制度、公的年金制度、介護制度等の改革を行い、生涯にわたり安心して暮らせる社会保障制度を構築することを目指す。
あまり具体的な内容が書いていないので割愛します。
政策比較
高齢者介護で大きな争点として、
・介護報酬
・人材確保
・施設整備(特養待機者問題)
・自己負担
といった部分で比較してみました。
政党 | 介護 報酬 | 人材 確保 | 施設 整備 | 自己 負担 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
自民党 | 処遇改善 | 子育て支援推進 | |||
希望の党 | BI導入 合算制度 | ||||
公明党 | 処遇改善 | 低所得 者対策 | |||
日本共産党 | 引き上げ | 賃上げ | 抜本的増設 | 低所得 者減免 | |
立憲民主党 | 引き上げ | 待遇改善 | 負担軽減 | ||
維新の会 | 解決へ | 地方分権と規制緩和 | |||
社民党 | 抜本的 見直し | 賃金 引上げ | 計画的 に増設 | 3割負 担廃止 | |
こころ | 介護制度等の改革 |
印象としては、あまり争点として考えていない政党が多いということです。
超高齢社会に向けて、具体的な政策の提案もない党もみられています。
介護・医療の現場で働く人は不規則労働だし、選挙に関心もない人が多いと思われれば、
そこに突っ込まれる政策も財源も失っていくことになります。
ぜひ選挙で一票を。
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