ドーナツで窒息。介助していた特別養護老人ホームの准看護師に有罪判決。→東京高等裁判所で逆転無罪!

ドーナツで窒息。特別養護老人ホームの准看護師に有罪判決

特別養護老人ホームの職員が訴えられる

介護現場を舞台にした裁判はこれまでも数多く行われていました。いわゆる介護裁判です。

今回の事件は特別養護老人ホームでのおやつの介助をしていた際の窒息による死亡をめぐって裁判が起こされました。

ここまではよく行われる介護裁判のニュースです。窒息の事故は非常に多いです。当然、特別養護老人ホームに入所する利用者ですので嚥下能力も低下していますし、ドーナツはパサパサするので、誤嚥しやすい食べ物のひとつです。

ただ、ここで大きな問題になっているのが、訴えられているのが、特別養護老人ホームに勤務する准看護師個人であるということです。

介護施設に勤務する職員個人が訴えられる事態

この事態に、各団体が無罪を勝ち取るための署名活動を行いました。署名の数およそ44万件。

ただでさえ介護現場は人材不足なのに、このような事件が起こり、職員個人が訴えられるリスクなどを負わなければいけないということであれば、さらに介護の仕事をしたいという人は少なくなるのではないかと、そりゃ間違いなく人は集まらなくなるでしょうね。

必死で集めた署名。
それでも、悲痛な願いは届くことはありませんでした。

求刑通りの有罪判決で罰金20万円の支払いが命じられました。罰金の額が問題ではありません。求刑通りの有罪という判決が出ることが問題なのです。

死因は窒息と直接関係があったのか

まず争点に上がっているのが、当時85歳だった利用者の死因についてです。

窒息から一か月後に亡くなっているのですが、弁護側は脳梗塞の可能性もあるとして反発。

ただ、今回の裁判の判決の中で語られたのはこのような内容でした。

ドーナツを詰まらせて窒息した以外の可能性は極めて低い


NHK NEWS WEB

つまりドーナツを食べた際の窒息による死亡であると断定したのです。

准看護師は「事故防止のための確認を怠った」のか?

もうひとつの争点は、この准看護師が事故防止のための確認を怠った、という点についてです。

誤嚥リスクが高いことを把握しており、間食はゼリーにすることが決まっていたようです。

それなのに、准看護師はそれに気がつかずにドーナツを食べさせたということです。

責任は准看護師にあるか?施設にあるか?

状況から考えて、准看護師にも責任はあると思います。

ただ、事故が起こったとき、その自己の責任を追及するのではなく、事故の原因がどこにあったのか、再発予防のためにシステムとしてどのような対策を立てていくのかが事故対応になります。

こういった事故が起こった場合、まず原因を確認し、事故リスクを軽減することをまず考えるのですが、職員一人の責任として擦り付けるのではなく、チームとしての改善策を検討していくべきです。

おやつが乗ったプレートはちゃんと利用者の名前が見えるようになっていたか、
他の職員と一緒にダブルチェックができる体制はできていたか、
他の職員からの申し送りが確実にできていたのか、
このような要因も含めて施設全体として改善に向けて取り組むことが求められます

ただ、この裁判は、施設の責任ではなく准看護師個人の責任であることを追及しているのです。

介護の現場で働くスタッフです。

今回は准看護師が訴えられていますが、介護職が同じように訴えられ、有罪判決が出ることもあるかもしれません

介護職員の仕事は・・・

・給料安い

・労働環境よくない

・腰痛などの労働災害多い

・勤務が不規則・夜勤もあったり長時間勤務もある

訴えられるリスクもある ←NEW

これでは介護の仕事なんてますます人が集まらなくなるんじゃないでしょうか。

介護の仕事の魅力をいくら発信しようと、こういった状況を改善しない限りは難しいですよね。

追記:准看護師の無罪を求める署名16万人分を提出

この事件で業務上過失の罪に問われている准看護師の無罪を求める署名が提出されました。

日テレNEWS24
 
安曇野特養事故 准看護師の無罪訴え署名|NNNニュース
http://www.news24.jp/nnn/news16462213.html
安曇野市の特別養護老人ホームに入所していた女性がドーナツを食べた後死亡した事故で30日、業務上過失致死の罪に問われている准看護師の無罪を訴え、支援団体が約16万人分の署名を東京高裁に提出した。准看護師は一審で罰金20万円の判決を受けている。

署名はおよそ16万人。介護の現場を担う職員の萎縮を招く恐れがあるとして、支援団体が署名を集めていました。

この支援団体が東京高等裁判所に署名を提出するとともに、弁護団も控訴の趣意書を提出しています。

「ドーナツは窒息の可能性がある」「形状を確認しなかった過失がある」と主張する長野地裁の判決に対して、高等裁判所がどのように判断するのか注目されます。

僕もドーナツ好きです。ドーナツ食べたい利用者だってたくさんいますよ。

パサパサするものは、そもそも介護の施設なんだし、はじめから提供しなけりゃいいんじゃない、という過剰な反応が起きる可能性だってあります。

職員個人の責任が追及され、現場が委縮していったら介護の現場で働きたい人はますますいなくなりますよ

追記:いよいよ控訴審。業務上過失致死にあたるのか?

控訴審が明日、1月30日から行われます。

Yahoo!ニュース
 
介護中に「ドーナツで窒息死」、職員に刑事責任はある? 30日から控訴審(弁護士...
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200128-00010708-bengocom-soci
長野県安曇野市の特別養護老人ホーム「あずみの里」で2013年、入所者の女性(当時85歳)を死亡させたとして、業務上過失致死罪に問われた准看護師の山口けさえ被告人の控訴審が1月30日、東京高裁ではじま - Yahoo!ニュース(弁護士ドットコム)

「有罪で終わるのならば、歴史の法廷で裁かれるのは裁判所だ」。弁護団は控訴審を前に、地裁判決への憤りをあらわにした。

そもそも、女性にとってドーナツは危険なおやつだったのか。弁護団は「女性にとって危険な食べ物ではなく、山口被告人がドーナツをゼリーに変更することを知らなかったとしても、なんの過失でもない」と反論する。

地裁判決は、女性が食べ物を口の中に詰め込みすぎる傾向があったが、実際には間食で窒息の危険が高いといえる事態は生じていなかったなどとして、注意義務の過失を否定した。

一方で、ゼリー状の間食への形態変更があったのに誤った間食を配膳すれば、危険を生じさせる恐れがあったとして、おやつ確認義務の過失を認定している。

控訴審で主任弁護人を務める藤井篤弁護士は、こうした過失認定を「論理矛盾」と指摘。「食べ物を上手に飲み込めない『嚥下障害』のない女性がドーナツを食べる危険は、どの程度あるのか。ゼロではないかもしれないが、業務上過失致死という罪は『業務上の責任をわきまえないで、人を死に至らしめる』という重いものだ。それはありえない」と批判した。

加えて、「こんなことで介助にあたっている人が業務上過失致死になるなら、怖くて何もあげられない。普通のおやつはとてもあげることができない」と介護業界に波紋が広がっていると話した。

介護中に「ドーナツで窒息死」、職員に刑事責任はある? 30日から控訴審

いわゆるドーナツ事件の控訴審。

重要な争点としては、過失致死が適用されるだけの重大事故なのかということと、死因が窒息によるものなのかというところに絞られています。

ドーナツが危険な食べ物と認知されることになりましたが、別にドーナツが特別危険な食べ物なわけじゃありません。また有罪判決にされたらドーナツ業界もキレるべきですね。

どんなに対策をしたとしても、誤嚥のリスクはゼロにはできないわけですから、それを職員個人の責任にしていったら誰も介護の仕事なんてできないですよ。

誤嚥リスクの高い利用者に中止すべきだったとか言うけれど、誤嚥リスクのない利用者なんて特養にはいないですよ。

控訴審に、介護業界の注目が集まります。

追記:第二審結審。判決は、逆転無罪。

この事件に関して、控訴審が行われ、東京高等裁判所は罰金刑とした1審の有罪判決を取り消しました。判決は、逆転無罪となりました。

7年前、長野県の特別養護老人ホームでドーナツを食べた入所者が死亡し、准看護師が業務上過失致死の罪に問われた裁判で、2審の東京高等裁判所は、罰金刑とした1審の有罪判決を取り消し、無罪を言い渡しました。今回の裁判は医療や福祉に携わる全国の関係者から介護の現場が萎縮しかねないと注目されていました。

無罪を言い渡されたのは、長野県安曇野市の特別養護老人ホームに勤める准看護師の60歳の女性です。平成25年、おやつの確認を怠り、ドーナツを食べた85歳の女性を死亡させたとして、業務上過失致死の罪で起訴されていました。

1審の長野地方裁判所松本支部では、罰金20万円の有罪判決を言い渡され、2審で被告側は改めて無罪を主張していました。

28日の2審の判決で、東京高等裁判所の大熊一之裁判長は「1審は被害者に対するドーナツによる窒息の危険性を具体的に検討すべきだったのにそれを見過ごしている」と指摘し、1審判決を取り消しました。

また、施設での食品の提供について「おやつなどの間食を含めて食事は人の健康や身体活動を維持するためだけでなく、精神的な満足感や安らぎを得るために重要だ。身体的なリスクに応じて幅広くさまざまな食べ物を取ることは、人にとって必要だ」と指摘しました。

そのうえで「おやつの形状が変更されていたことは准看護師の通常業務の中では容易に知ることができなかった。ドーナツで窒息する危険性や、死亡するとあらかじめ予測できる可能性は低く、ドーナツを提供したことが刑法上の注意義務に反するとは言えない」として無罪を言い渡しました。

今回の裁判は准看護師が有罪とされると、介護の現場が萎縮しかねないとして、無罪を求める27万人余りの署名が東京高裁に提出されるなど、医療や福祉に携わる全国の関係者の注目を集めていました。

NHK NEWS WEBより

この判決、とても画期的だと感じる部分があります。

それはここです。

「おやつなどの間食を含めて食事は人の健康や身体活動を維持するためだけでなく、精神的な満足感や安らぎを得るために重要だ。身体的なリスクに応じて幅広くさまざまな食べ物を取ることは、人にとって必要だ

法廷では危機管理や予見可能性を強調し、介護職員を毎回ぶっ叩いてきた裁判所が、「精神的な満足感や安らぎ」という言葉を使い、介護職の役割が、事故を起こさないように管理することだけではないことを認めてくれています。

先日ツイッターでめちゃくちゃ叩かれていた看護小規模多機能。

こういった事件での有罪判決があると現場も委縮し、介護は利用者が望む生活や幸せを実現することを諦めるようになってしまいかねません。

まあ、これは賛否あっていいと思うんですけどね。

事業所の価値観はそれぞれあって、自分の望むサービスを受けられる社会であってほしいというのが自分の考えです。

ちょっと脱線しましたが。

人間らしい判決を出した東京高等裁判所に拍手を送りたいです。