ホームヘルパーが利用者宅訪問中に暴行を受け死亡。介護の現場から暴力はなくならないのか。

ホームヘルパーが利用者宅訪問中に暴行を受け死亡。

暴力にさらされる介護職員

前回の記事で認知症女性から首を絞められたグループ職員の話題をご紹介しました。

ツイッターなどでも話題になっており、利用者からの暴力にさらされるという経験を、非常に多くの介護職員が経験しているということがわかります。

今回も介護の現場での暴力についてのニュースが報道されていますのでご紹介します。

訪問介護で訪問先で暴行を受ける


 9日午後8時55分ごろ、大阪市生野区のマンション一室で、高齢女性が全裸で倒れているのを大阪府警生野署員が見つけた。女性は顔や背中に殴られたような痕があり、現場で死亡が確認された。この部屋に住む無職の十亀(そがめ)智広容疑者(51)が「ヘルパーの女性を殴った」と話しており、生野署は10日、傷害の疑いで逮捕した。

 亡くなったのは、生野区の介護施設職員、佐藤時子さん(70)。逮捕容疑は今月8~9日、室内で佐藤さんの顔などを殴ったり蹴ったりして、けがをさせたとしている。容疑を認めている。
生野署によると、十亀容疑者が別の知人女性に「ヘルパーと殴り合った」と相談。この女性が9日夜に部屋を訪れ、佐藤さんが倒れているのを見つけて110番した。十亀容疑者は1人暮らしで、佐藤さんはヘルパーとして部屋を訪問していたとみられる。同署が詳しい動機や死因を調べている。


介護職女性が死亡 「殴った」51歳男を傷害容疑で逮捕 大阪・生野  (毎日新聞デジタル)

容疑者の証言などをもとに事件の内容を整理してみます。

被害者である70歳女性は訪問介護事業所に勤務をしていて、集合住宅で一人暮らしの51歳容疑者宅をホームヘルパーとして訪問しています。

そこで何らかのトラブルとなり、容疑者が殴るけるの暴行を加えます。

容疑者は知人女性を呼び相談、その女性からの通報をきっかけに事件が判明、70歳女性の死亡が確認された、ということになります。

動画もありますので紹介しておきます。

51歳一人暮らしの男性への訪問介護

この51歳男性がどのような障害を持っていたのか、介護保険で特定疾患を有する2号被保険者として訪問介護を利用していたのか、それとも障害の居宅介護でヘルパーの派遣を受けていたのか、報道されている情報ではその詳細については不明です。

殴る蹴るの暴行を加えることができ、ヘルパーを利用しながらでも一人暮らしができるということは、それなりの能力は維持できている容疑者であったことが想像できます。

被害者となったヘルパーは70歳女性ということで、年齢では20歳近く上ですので、暴力をはねのけることができなかったのかもしれません。

その51歳男性がどのようなサービス利用をしていて、どのような人間性だったのかなど、詳しいことはわかりませんが、そういった意味では、暴行などのリスクも考えることはできたケースのかもしれません。

訪問介護というサービス特有の危険性

施設などと近い、訪問介護は自宅にホームヘルパーが訪問する、いわばアウェーでの業務を行います。

助けを呼んだとしても、訪問介護事業所とは物理的な距離がありますので、すぐに駆け付けることは難しく、利用者の要求が過度になるパワハラの被害が起こりやすくなります。

全国の介護従事者で作る労働組合「日本介護クラフトユニオン」が去年行ったアンケート調査によりますと、回答したおよそ2400人のうち暴言や暴行などのパワハラを受けた人の数が70%に上ったということです。
また、15%の人が▼おむつを交換するときに顔を殴られたり▼足蹴りをされたりする身体的な暴力を受けた経験があると回答しました。
組合の染川朗事務局長は「今回の事件が起きてしまい残念だ。介護現場では従事者の尊厳が低く見られ、利用者のストレスのはけ口になっている。未然に防ぐことができなかったのか、業界全体で考える必要があり、相談窓口の設置や、被害を受ける危険性がある利用者のもとには、2人で訪問できるようにするなどの対策が急がれている」と話していました。

NHK ニュースウェブより

以前にはこのような事件もありました。

 11日午後1時55分ごろ、三郷町信貴ケ丘2の民家に住む女性(86)から、「子供が刃物を持って暴れ、介護の人とけんかになっている」と、110番通報があった。西和署によると、同町の男性介護士(64)が居間で血だらけになって倒れ首など数カ所を切られて重傷。また、女性の息子で無職の男(58)が自宅横のガレージに止めた車内で、包丁で首などを切り意識不明の重体という。同署は男の回復を待ち殺人未遂容疑で事情を聴く方針。
 同署によると、介護士は同日午後1時ごろ、1人で介護に訪れ、掃除をしていたところ、同45分ごろ、男が台所から持ち出した文化包丁(刃渡り約20センチ)でいきなり背後から切りつけたという。
 男は母親と2人暮らし。交通事故の後遺症で足が不自由なため、松葉づえや車いすで生活し、身の回りの介護を受けていたという。

こういった危険もあることを考えれば、訪問介護事業所としても十分なリスクマネジメントをしていかなければいけません。

二人派遣、男性スタッフの派遣など、ヘルパーを守るための手段はあります。

ただ、それができるだけの人手がないというのが現実。

介護職員自体が不足していることはもちろんですが、訪問介護ヘルパーの人材不足は特に深刻化しています。

どこの訪問事業所に相談しても希望する時間帯のサービスを利用できない、というのはざらなのがいまの介護保険。

利用者の在宅生活を支える根幹ともなる訪問介護サービスにこれだけ人が集まらないと、住み慣れた自宅での生活を維持し、在宅介護の限界値を引き上げようとする地域包括ケアシステムを推進していくのは無理でしょう。

暴力に悩むホームヘルパーへ

ホームヘルパーとして自宅に訪問するうえで、このような身の危険が迫ったとき、どのように対処することが望ましいのか。

逃げることでしょう。

自分の退路を確認し、事業所との連絡ができるようにしておくことです。

安全に訪問を継続できないようなトラブルがあるのであれば、事業所の責任者やケアマネから説明をし、安全が担保されない訪問はできないことを伝えるしかありません。

訪問介護だけに限らず、介護職員は責任感が強く、抱え込んでしまうことが多い傾向にあります

抱え込まずに相談する、そして自分の身を守ることを考えましょう。