人の生きる価値とは。津久井やまゆり園事件初公判。植松聖被告が暴れ、一時休廷に

津久井やまゆり園事件、初公判。植松被告の衝撃的な行動

相模原障害者連続殺傷事件はいま

このブログでも紹介しました、相模原市緑区の津久井やまゆり園で起こった障害者施設での連続殺傷事件。

事件自体も非常にショッキングなものでしたが、それ以上に、その後の植松聖被告の言動はそれ以上にショッキングなものでした。

植松被告の主張「障害者には安楽死を」

偏った思想とも言えますが、植松被告が主張していたのは、
「障害者は安楽死させるべき。障害者は周りを不幸にする。」というものでした。

強い差別意識を持っていたことは間違いありません。

ただ、一方で、植松被告を英雄のように評価する声がSNS上などであったことも非常に残念ながら事実です。

障害者の生きる価値とは、障害者はそもそも社会に必要なのか。

そんな意見も散見されました。

その後も植松被告はその主張を変えることはありませんでした。

そして、この事件の初公判。

これはあくまで植松被告の裁判であって、障害者が生きる価値を問う裁判ではない。

けれど、その裁判の行方には注目が集まりました。

注目の初公判。傍聴を求める長蛇の列。

この裁判、大きな注目を集め、傍聴希望者は1944人にものぼりました。

雨の中、傍聴希望者が長蛇の列となっています。

傍聴希望者が多数だったため、裁判は遅れて開廷しました。

衝撃的な初公判。

 相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で平成28年、入所者19人が刺殺され、職員を含む26人が重軽傷を負った事件で、殺人罪などに問われた元職員、植松聖(さとし)被告(29)の裁判員裁判の初公判が8日、横浜地裁(青沼潔裁判長)で開かれた。植松被告は起訴内容ついて「(間違い)ありません」と述べた。弁護側は、事件当時、精神障害があったと無罪を主張した。その後、植松被告が暴れ、裁判は休廷になった

 午前11時に開廷の予定だったが、傍聴希望者が多かったことなどから手続きに時間を要し20分遅れて始まった。植松被告は黒いスーツ姿に腰辺りまで伸びた髪を後ろに束ね、数回会釈しながら入廷。

 裁判長から氏名などを問われると、小さいながらもはっきりとした声で答えた。植松被告は罪状認否で「(間違い)ありません」と認めた後、弁護側の申し立てを受けて裁判長が植松被告の発言を許可。証言台の前に立っていた植松被告は小声で「皆さまに深くおわびいたします」と述べた後、突然顔に手を当て、うめき声を発して暴れだし、刑務官が床に取り押さえた。

 裁判長が傍聴人に退廷を命じ、法廷内には「早く退廷してください」と地裁職員らの怒声が響くなど騒然となった

https://www.sankei.com/affairs/news/200108/afr2001080015-n1.html

罪状認否では間違いないことを認めたということですが、反省や謝罪の姿勢が見られるものではありませんでした。

裁判の場でもなお、自分の主張を通したかったのでしょうか。

裁判を傍聴した人の中には津久井やまゆり園の園長もいました。

入倉園長は、当時の園長らと共に被告と面接。被告は堂々とした様子で「(複数の障害を持つ)重複障害の人は周りを不幸にする」と繰り返し、この仕事で給料を得ていることと自身の考えとの矛盾を指摘されると、「そうですね」と同意して退職を願い出た。被告はこの日の夜措置入院し、約5カ月後に事件を起こした。

 入倉園長が被告と会ったのは面接の時が最後。「(面接では)早く終わらせようとする普段と違い、ひるまなかった」と振り返り、「園の環境と事件を起こしたことに関係があるのか。被告の発言を聞くのが私の責任だ」と話した。 

「なぜああなったのか」 事件後、思い悩む日々 やまゆり園園長・相模原殺傷 |yahooニュース

傍聴したやまゆり園の園長のコメントも掲載されています。

障害者へ対してのヘイトクライム。

この事件の根底にあったのは植松被告の差別意識です。

極端な優生思想がこの事件を生んだのです。

ヘイトクライムに他なりません。

相模原障害者殺傷事件 ―優生思想とヘイトクライム―
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植松被告の思想は彼独自のものではない

ただ、障害者に対する差別感情を持っているのは植松被告だけではありません。それはこの事件に対してのSNSでの反応などを見ていても理解できます。

れいわ木村英子参議院議員がこのようにコメントしています。

◆私は、彼だから起こしたとは思っていないんです。最初は障害のある人を助けたいという思いで施設の職員になる方はたくさんいると思います。でも、施設によっては、決まった時間にご飯が来て、週2回くらいお風呂に入って、それ以外は入所者はほとんどベッドの上か狭いデイルームにいて……。そんな生活を何十年も繰り返していたら、心がだんだん死んでしまう。そんな自由を奪われた人たちの姿をずっと見続けている職員が、過重労働の中、介護を流れ作業のようにやっていく。津久井やまゆり園がそういう施設だったのかは分かりません。でも、希望が見えなくなる閉ざされた世界があるんです。本当に。

 そんな環境で、植松被告のような職員が出てきてもおかしくないと思います。障害のある人を見て、何も意思がないとか、何もできないで人間として生きている価値があるんだろうかと思っている職員の方が、私は今もいると思います。だから、植松被告がおこなったことへの怒りはもちろんありますが、彼のような人が出現してしまう環境への恐怖のほうが強いです。

「彼だから起こしたとは思っていない」 れいわ木村参院議員が語る相模原殺傷事件 |毎日新聞

何の意思もない、何もできない、そんな障害者に生きる価値はないんじゃないかと。そう思いながら仕事をしている介護職員もいると。

役に立たない障害者ひとりにかかっている税金や家族の負担などを考えれば安楽死をさせるべきだという優生思想。

人の価値とは何か

そもそも人の価値とは何か

生産性があるかどうかなのか。美しいかどうかなのか。強いかどうかなのか。

それは、誰から見ての価値なのか。

植松被告の持っていた物差しでは価値がないのかもしれないけれど、ほかの人の物差しでは違うのかもしれない。

人の価値を決めるのは政府でもないし、給料の額でもないし、もちろん植松被告でもない

非常に残念なことに、基本的人権の概念もゆがめられてきている印象を受けます。

自民党の憲法改憲案でも公の秩序や公益を優先し、基本的人権が軽視されているという主張もあります。

生産性や効率が重視され、生きづらい思いを抱えている人も多い社会になっているように感じます。

亡くなった19人の思い

この事件で亡くなったのは19人。

19人と言えばただの数字でしかありません

匿名であることで、その事件の重さを感じにくくなっていることも間違いありません。

ただ、ひとりひとりにはそれぞれのストーリーがあり、その命を支えてきた人たちがいます

それを紹介しているサイトがあります。

今回、初公判を前に、家族が実名を公開した方の手記です。

美帆は一生懸命生きていました。その証を残したいと思います。恐い人が他にもいるといけないので住所や姓は出せませんが、美帆の名を覚えていてほしいです。どうして今、名前を公表したかというと裁判の時に「甲さん」「乙さん」と呼ばれるのは嫌だったからです。話しを聞いた時にとても違和感を持ちました。とても「甲さん」「乙さん」と呼ばれることには納得いきませんでした。ちゃんと美帆という名前があるのに。どこに出しても恥ずかしくない自慢の娘でした。家の娘は甲でも乙でもなく美帆です。

この裁判では犯人の量刑を決めるだけでなく、社会全体でもこのような悲しい事件が2度とおこらない世の中にするにはどうしたらいいか議論して考えて頂きたいと思います。障害者やその家族が不安なく落ち着いて生活できる国になってほしいと願っています。障害者が安心して暮らせる社会こそが、健常者も幸せな社会だと思います。

19のいのち

今日の初公判では、植松被告の行動によって、事件の背景や真実に迫ることなく閉廷しました。

今後の裁判で、真実を語ることはあるのでしょうか。

植松被告は控訴もしないことを表明しており、事件はひとつの事件としてのみ幕を閉じ、死刑の判決を受けるのかもしれません。

そのときに、一部の人から植松被告が英雄として扱われるような社会でないことを願いたいのです

記事編集・監修

 

介護福祉ウェブ制作ウェルコネクト

居宅介護支援事業所管理者・地域包括支援センター職員・障碍者施設相談員など相談業務を行う。

現在はキャリアを生かした介護に関するライティングや介護業界に特化したウェブ制作業を行う。

津久井やまゆり園事件、初公判。植松被告の衝撃的な行動

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