住宅型有料老人ホーム「風の舞」 職員全員退職と入居者6名死亡の怪。

老人ホーム「風の舞」で相次いで入居者が亡くなる

老人ホーム「1カ月で6人死亡」 介護スタッフ「全員退職」

11月上旬、鹿児島県などに寄せられた匿名の通報。

「鹿屋市の住宅型有料老人ホームで、入居者が亡くなっている」。

複数回にわたる通報を受けて、16日、鹿児島・鹿屋市にある住宅型有料老人ホーム「風の舞」に、県と市が立ち入り検査を実施した。

すると、10月中旬からおよそ1カ月の間に、6人の入居者が相次いで死亡していたことがわかり、21日午後、「風の舞」の波江野院長が会見を行った。

風の村グループ統括責任者・波江野院長は、「心不全が85歳、それから誤嚥(ごえん)されたのが86歳、それから消化管出血が88歳です」、「そこまでよう持たせたなと僕は思います」と話した。

実は、入居者6人が死亡する以前、この施設では、8人いた介護職員が賃金面での不満や内部的なトラブルによって、相次いで退職していた

メディアなどでも報道されていますが、
一カ月で6人死亡と、介護職員8人退職。
どっちもインパクトが強いですが、どちらかというと8人が退職したということの方がやばい気がします

住宅型有料老人ホームということなので、
それが住宅型有料老人ホームの職員だったのか、
それとも住宅型有料老人ホームに併設されている訪問介護事業所の職員だったのか、
もしくは併設の通所介護事業所の職員だったのか、
そのあたりも報道の内容では不透明ですね。
おそらく住宅型有料老人ホームの職員なのだと思います。
訪問介護の職員が全員退職したら、職員配置基準の規定にひっかかるでしょうから、
その言及などもないということは有料老人ホームの職員と考えられます。

舞台となった老人ホームとは

今回、報道されている老人ホームというのは住宅型有料老人ホーム「風の舞」で、
この施設は風の村という鹿児島のグループの中の一施設のようです。

風の村

かなり広大な土地に複数の施設が設置されている
総合的なグループのようです。

風の村全体図
(風の村ホームページより転載)

グループには在宅療養支援診療所があり、そのDr.が施設内に訪問診療をしていたので、
記者会見でこのDr.が、

医療面に関して言えば、これだけやれば文句を言われる筋合いはないと思いますよ。(遺族には)むしろ感謝されていますよ。

ともコメントしていましたね。
訪問診療や訪問看護は適切な提供ができていたという思いがあるようですが、
介護の手が不足していたことはこの記者会見の内容からも間違いなさそうです。

最近の住宅型有料老人ホームについて

老人ホームで・・・という報道だけでなかなか伝わらないのですが、
報道されている施設は住宅型有料老人ホームです。
老人ホームではありますが、施設内で介護を提供する特定施設(介護付有料老人ホーム)ではなく、
住宅型有料老人ホームは外部サービスを利用しながら生活するための施設です

これまでは住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者専用住宅という外部サービス利用型の施設は
重度の介護が必要になったら追い出される、というイメージが強く、
敬遠されることも少なくありませんでした。

在宅療養支援診療所

しかし、訪問介護事業所や定期巡回随時対応訪問介護看護事業所などが併設され、
24時間体制での介護を提供できるところが多くなり、
住宅型有料老人ホームだから介護の重い人は受け入れない、ということは少なくなり、
最後の看取りまでその施設内で行うことができるようになってきました

特別養護老人ホームに入ればいいじゃないかと思う方も多いと思いますが、
会見で施設長が言っていた通り、
重度な医療が必要になると、受け入れができないという特別養護老人ホームも増えています。

特養にも在宅にも居場所がないという高齢者も増えていて、
今回のような在宅療養支援診療所併設の住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅が
医療が必要な利用者の受け皿になっていいる現実もあります。

特別養護老人ホームを持つ社会福祉法人がリスクを冒したくないがために
医療ケアの必要な利用者を敬遠したり、攻撃性の高い他害行為のある利用者の入所を拒否するなど
利用者を選別するという社会構造自体にも問題がある
ことは間違いありません。

住宅型有料老人ホームの利用者の生活を誰が支えるのか

ただ、それもマンパワーがあってのことです。

おそらくそのマンパワーの部分を担っていたのが退職した8人の職員だったものと思われますが、
住宅型有料老人ホームであるため職員の配置基準はないとはいえ、
減った職員分のマンパワーの補充ができず、このような事態に至ってのではないかと思われます。

介護疲れ

今回のような大量退職などの状況で、果たして適切な看取りのケアが実施できていたかどうか。
住宅型有料老人ホーム内で、
医療や看護で提供できるケアだけでは不十分です。
排泄や清潔など、生活の部分で必要とされるケア、つまり介護労働はよりマンパワーが必要になります。

適切な医療が提供されていれば、介護の質の部分は問われないのか。疑問が残ります。

こういった人手が圧倒的に足りないという危機的な状況であったのなら、
住宅型であるメリットを生かして
別法人の定期巡回型や夜間対応型のサービスなどを利用することもできたのではないでしょうか。

ケアプランを作っているケアマネはいるはずなので、
生活を支えるケアプランができていたのかどうか
その人の最後を迎えるためのケアプランができていたのかどうかも問われるべきではないでしょうか。

大量退職のなぜ?

報道では「虐待はなかった」という調査結果は公開されましたが、
適切な介護が提供されていたのかというと、どうでしょう。
虐待の一つとして、意図的に介護を行わない介護放棄(ネグレクト)というものがありますが、
それについてもなかったということは証明された
、ただそれだけのことと考えていいでしょう。

8人が一気に退職したら、
これまでの積み上げも何もなくなりますし、
グループの職員がサポートをするといっても十分なケアはできないでしょう。

そもそもなぜこれだけの大量な退職者が出たのか。

転職を考える女性

一部報道では夜勤手当の減額が主な退職理由だったということです。
経営判断の問題ではないかと思うのですが
利用者の生活を守る介護職員の待遇。
様々な問題はあると思いますが、日本全国どこでも人手不足な介護職員。
転職先はいくらでも探せるわけですから、
慎重な判断が必要だと思いますし、
職員が長く働き続けられる待遇や職場環境を目指さなければいけないでしょう。

記者会見の問題

報道が過熱した要因、一つはこの記者会見での態度などもあります。
腕組みをしながら答える院長、
首をかしげ椅子にもたれたままの施設長、
反省する様子が記者会見の様子からはうかがい知ることができません

人手不足や連日の報道で疲弊しているのかもしれませんが、
少なくとも施設内で複数の利用者が亡くなられ、
そのご遺族も見られるということを考えたうえで
あの態度はどうなのでしょう。

少なくとも利用者を預かる施設側の責任者として
適切な態度はとれなかったのでしょうか。

姿勢を正す、
失礼のない服装、
椅子の背もたれにもたれない、
十分な介護ができなかったことに対する想いを伝える

できることはいくつもあったはずです。

こういったことをないがしろにする責任者がいるのであれば、
やはり介護の分野に魅力を感じる人も少なくなってきてしまうでしょう。

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記事編集・監修

 

介護福祉ウェブ制作ウェルコネクト

居宅介護支援事業所管理者・地域包括支援センター職員・障碍者施設相談員など相談業務を行う。

現在はキャリアを生かした介護に関するライティングや介護業界に特化したウェブ制作業を行う。

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