この記事の目次
令和3年介護報酬改定の目玉。
令和3年4月、介護報酬改定が行われます。
サービス種別によって、受け取り方もだいぶ違うとは思いますが、報酬単価などについてはこちらにまとめていますので、そちらも併せてご確認ください。
今回の報酬改定では、新しい加算が生まれるというだけでなく、既存の加算の算定要件が変わるなどのリニューアル加算がめちゃくちゃ多いです。
算定率の低い加算をいじくって、リニューアルして、算定率を増やしていこうという狙いもあるんだと思います。ただ、これ絶対に現場は混乱するだろうなと思っています。こうやって加算をこねくり回して、実地指導で指摘するとかいう感じになるんでしょうけれど。いつまでこんなことを続けるんでしょうね。
そんな愚痴はとりあえず置いておいて、ここで今回の報酬改定で注目を集めている加算を紹介します。
それが科学的介護推進体制加算です。
ん?今までやっていた介護は科学的ではなかったのか?
今回は注目の新加算「科学的介護推進体制加算」と「LIFE」を紹介します。
科学的介護推進体制加算について
科学的な介護とは?
そもそも「科学的介護」とは、どんなものか。
・介護ロボットをゴリゴリ使って、テクノロジーの力を活用して介護を行うことか?
・ボディメカニクスを徹底的に分析して介護技術を科学的に提供することか?
・利用者の認知機能維持のために科学の勉強を活動として提供することか?
・・・全部外れです。
科学的介護というのは、介護のビッグデータを収集して、自立支援・重度化防止に向けて効率的な介護サービスを提供できることを目指すものです。
そのビッグデータを収集するデータベースがLIFEというものです。
小沢健二のCDアルバムではありません。(若い人は知らないか、ライフイズカミンバック!)
介護のビッグデータを収集するデータベースがLIFE
LIFEが自立支援や重度化防止に役立つサービス内容についてのデータを集積したデータベースであることがわかりました。
LIFEは新しくゼロから作られるものではありません。
既存のデータベースCHASEとVISITというふたつを統合して作られたデータベースです。
CHASEは高齢者の状態像やケア内容に関するデータベース、VISITは通所・訪問リハビリテーション事業所から収集したリハビリに特化したデータベースです。
LIFEは「Long-term care Information system For Evidence」の頭文字4つをとって名付けられました。ちなみに、「Long-term care」って聞いたことあるな、って思った人もいると思いますが「Long-term care insurance」は介護保険制度のことです。
じゃあ、LIFEっていうデータベースの情報があれば、自立支援や重度化防止に効果的なサービスがわかるし、それを提供するっていうことね。
という簡単なものではなありません。
データベースがあっても、肝心なデータの蓄積がなければ、本当に効果的な科学的介護を提供することはできません。
今は、科学的介護を提供するその前段階。まずはLIFEに利用者に関するデータを集めたい。
そこで、科学的介護推進体制加算という加算を作って、事業所から利用者の情報を吸い上げるというわけです。
そして、そのデータベースからのフィードバックを活用してサービスの内容を検討してくださいよ、っていうのがこの科学的介護推進体制加算です。
LIFEに情報提供をする事業所には40単位(施設であれば加算Ⅱ60単位)の加算が算定できます。
LIFEのデータベースへの情報提供や利用には登録手続きが必要なので、加算算定を考えている事業所は早めに行いましょう。
個人情報の問題ってどうなの
1人当たり40単位を加算を算定できるということであれば。例えばデイサービスでは入浴介助加算(50単位)に近いくらいの加算算定になるわけですから、そりゃありがたい話です。
ぜひとも算定したい。
でも、40単位もしくは60単位で利用者の個人情報を売っているようで、ちょっと悪どいことをしているような感覚になります・・・。
素朴な疑問ですが。
LIFEに情報提供したくないです!っていう利用者さんがいたらどうなるんでしょうね。提供するデータの内容を見ていると、氏名や被保険者番号や生年月日などがっつり個人を識別可能な情報が含まれているんですよね。
利用者さんひとりが情報提供に反対したら、全員分のデータ提供ができないわけですから、加算は取得できないなんてことあるんでしょうかね・・・。
介護に正解はない、を科学的介護は覆すのか?
科学的介護の導入の背景として、財源にも限りがあるんだから、より介護を効率的に提供するようにしましょう、という国の意図が見られます。裏を返せば、非効率なサービスはどんどん報酬を削りましょう、という方向性であることは間違いないです。
通所介護の利用者と通所リハビリの利用者の状態の変化とか追跡して、通所リハビリの方が悪化のスピードが速かったら通所介護と通所リハビリの報酬単価が逆転するなんてこと、あったりするんですかね。ニヤリ。
訪問看護は対象になっていないですけれど、訪問看護のリハビリと訪問リハビリテーションを比較したらどっちの方が自立支援や重度化防止に役立っていたかわかっていいじゃないですか。ねえ。
でも、本当に自立支援や重度化防止に有効なデータって収集できるのでしょうか。
家族との関係性や本人のモチベーションなど、データベースに反映できない情報も非常に重要なんじゃないかと思います。
通所系サービス事業所を利用している方の状態が改善したからといって、通所サービスだけが要因で状態改善したのではありません。訪問介護や訪問看護、ひょっとしたら訪問マッサージや配食サービス、はたまた老人会や近所のおばちゃんとのつながり、いつも挨拶してくれる小学生などが要因になっているのかもしれない。
ビッグデータで収集できる情報なんて、断片的な情報でしかないんです。
どうせ都合の悪いデータは隠して、LIFEのデータベースでこういう結果が出ているからこれが科学的だ、これが正解だ、という誘導をしたいんでしょうね。
極論、利用者の状態をデータに入力したらケアプランとしてサービスのパッケージが出来上がった状態で提示されるということです。そのだいぶ先にはケアマネ不要論とかケアマネ外しとかがあるんでしょうけど。
「介護に正解はない」
よく聞く言葉ですが、科学的介護とはそれを否定することにもつながりかねません。
ただ、あくまでLIFEから得られるデータはデータでしかないので、LIFEで示されている「正解」に従わなければいけないわけではありません。得られたデータを参考にしながら、ケアを提供することが求められていますが、従わなければいけないわけではありません。
介護に携わる人が、「科学的介護」に抵抗し得る確かな根拠をもって信念を持ってサービスを提供すること。データに勝る専門職としての知恵や技術・判断がそこにあることを証明してほしいなと思っています。
最近のコメント