91歳男性、介護付き有料老人ホーム”パーマリィ・イン明石”で孤独死、二週間放置の「なぜ?」

有料老人ホームでの安否確認の様子

有料老人ホームで入居者が孤独死!

にわかには信じがたいニュースです。耳を疑いました。

 兵庫県明石市の有料老人ホームで、入所者の91歳の男性が死亡したまま2週間近く放置されていたことが分かりました。

 22日、明石市の介護付き有料老人ホーム「パーマリィ・イン明石」で91歳の男性が自分の部屋で死亡しているのを職員が見つけました。男性は死後2週間ほど経っていて、腐敗も進んでいたということです。男性は自分の部屋で自炊をするなど介護の必要がない契約で利用していましたが、4日に体調不良を訴えたため、家族は施設に「様子を見てほしい」と伝えていました。しかし、数日後に施設側は男性の姿を見掛けたことから体調は回復したと判断し、その後の安否確認をしていませんでした。

[老人ホームで91歳男性が「孤独死」 2週間近く放置、腐敗も]

介護付き有料老人ホームに入居していた男性が自室で亡くなっており、死後2週間が経過してから発見したということです。

2週間です。その間、介護職員などは気が付くことがなかったのでしょうか。

介護付き有料老人ホームの実態とは

いわゆる有料老人ホームには大きく分けて、介護付き有料老人ホームと住宅型有料老人ホームがあります。

介護付き有料老人ホームはその名の通り「介護付き」で、介護サービスがセットになっています。特定施設という介護保険サービスの事業所指定を受けており、常駐している介護職員による食事や排せつ・入浴などの介護サービスが提供されています。介護保険サービスが定額コミコミになっているのが介護付き有料老人ホームです。

それに対して、住宅型有料老人ホームは有料老人ホームではあっても住宅であって、そこに入居する利用者は食事の提供や見守り支援などを受けることはあっても、実際の介護サービスが必要な時には訪問介護事業所などと介護保険サービス利用のための契約を結び、介護保険の枠内でサービスを受けることになります。つまり、自宅で介護保険サービスを利用するのと同じような感覚で制度利用をしていきます。

介護保険サービスが含まれているかそうでないかの違いです。

今回の事件が起きたのは介護付き有料老人ホームでした。

介護の料金も含まれるため、利用するのは当然介護保険の認定を受けた介護サービスが常に必要な高齢者がほとんどです。認知症や重度の寝たきりなど、在宅での介護が困難になり、特別養護老人ホームには空きがないため、やむにやまれず介護付き有料老人ホームに暮らすようになるケースも多いです。

介護付き有料老人ホームで自炊する利用者

しかし、今回死体となって見つかった91歳男性利用者は自室で自炊もしていたということです。

介護が必要な高齢者が自炊していたのか

しかし、常時介護が必要な利用者というイメージはあまりうかがえない様子です。

コーヒーを入れる高齢者

 同ホームは夜間も看護師やヘルパーが常駐する。介護保険サービスを提供しているが、男性は介護の必要のない「自立」でサービスを使っていなかった。施設のレストランで食事を取らずに自室で調理し、室内の清掃サービスも利用していなかったという。

老人ホームで90代男性が孤独死 明石の施設2週間気付かず  神戸新聞

自炊をする、介護も必要としない、室内の清掃も自分で行う。

介護付き有料老人ホームの入居者というイメージとは程遠い印象です。なぜこのような方が介護付き有料老人ホームに入居していたのか・・・。

普通型入居という居住形態

じつはこの有料老人ホーム、介護サービスを利用する介護付き有料老人ホームでありながら、普通型入居という居住形態を選択することもできます

パーマリィ・イン明石ホームページより

つまり、この利用者は自立、つまり介護保険非該当の方なのです。

有料老人ホームの機能のうち、ソフトの部分である介護サービスを利用しないで生活をしていたということです。

介護付き有料老人ホームの入居者ではあったものの、実際は介護を契約していない利用者だったということです。

だとしても、高額な入居一時金や管理費用を支払っている入居者には変わりなく、ここまで発見が遅れるということは異常と言えます。

家族の希望はなぜ無視されたのか

そして、今回のケースでは家族から見守りの依頼もあったということがわかります。

 今月4日に家族が面会した際、顔色が悪く、腰が痛いなどと訴えた。男性は日常的に「できることは自分でする」などと話していたが、家族はスタッフに「本人は嫌がると思うが、様子を見てほしい」と伝えたという

老人ホームで90代男性が孤独死 明石の施設2週間気付かず 神戸新聞

「本人は嫌がると思うが」と言っている時点で、どんな利用者像なのか、たぶん介護に携わっている人ならばなんとなくイメージできそうですよね。

自尊心が高くスタッフとのかかわりを拒否していたのか、猜疑心が強くて人を寄せ付けなかったのか、いずれにしろ、スタッフとの距離感は少なからずあったと思われます。

家族が様子を見てほしいと希望していたのにも関わらず、安否確認は行われませんでした。

安否確認の仕組みが必要だった

この施設に何が必要だったかと言えば、安否確認のための仕組みがそもそも必要だったのではないでしょうか。

自炊をすることを希望していたとしても、一日一回顔を見る機会を作ったり、モーニングコールをしたり、何らかの形で安否確認をすることが必要だったのではないでしょうか。

その点、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などは軽度者が入居する前提で設計されているため、そのような仕組みができています。

今回のケースの利用者像を考えれば、本来、介護付き有料老人ホームに入居するべきではなく、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅、軽費老人ホームになどに入居することが適当だったはずです。

持ち家文化の染みついた日本人適切なタイミングでの住み替えをすることが最善の方法と思いますが、家を所有物と考えたい日本人の性質がこういったミスマッチを生んでいるのかもしれません。

このような介護付き有料老人ホームでの自立型の入居スタイルにはルールが整備されておらず、このような入居スタイルが増えていくのであれば何らかの制度上の整備などが必要になるのではないでしょうか。

過去にもあった、有料老人ホームでの孤独死

実はこういった事件、初めてではないんです。

つくば市の介護付き有料老人ホームでも同じような事件がありました。

こちらは死後一週間で発見されていますが、やはり同じように自立型の居室入居者でした。

 同老人ホームでは、介護サービスの対象者でなくとも1日1回の健康チェックを受けてもらい、食事もホームが用意したものを食堂で取ることになっていた。
 しかし、この女性は、老人ホームを建設した際、事実上の「自宅」として生活できる専用個室をつくるよう要望。1階にある個室には専用の出入り口が設けられていたほか、自炊設備もあった。他の入居者とは違って毎日の健康チェックも断っていた

[老人ホームで孤独死 死後1週間、介護受けず ]日経デジタル

この方の場合は、本人の意思で毎日の健康チェックも断っていたようで、本人の専用個室を設ける要望が施設開設時からあったようです。

このような利用形態に対応するために、このような方法が考えられるでしょう。

・スタッフが一日一回安否確認の訪問をする

・新聞受けをチェックする

・日用品や食材の配達の有無をチェックする

・電気メーター・水道メーターの使用状況をチェックする

・モーニングコールを行う

有料老人ホームに対するニーズはますます多様化しています。何らかの形で最悪の事態を避ける方法を作っていかなければいけないですし、それを制度として整備していかないと、同じような事件がまた繰り返されることになるでしょう。

追記:明石市の対応

 兵庫県明石市は3日、同市内の介護付き有料老人ホームで入居者の男性が「孤独死」した問題を受け、施設側が男性の死亡に気付かなかった経緯や原因を究明する緊急検証チームを役所内に設置した。6月中にも調査結果や再発防止策を報告書にまとめる。
 24時間スタッフが常駐する明石市の介護付き有料老人ホームで5月、91歳の男性が死後約2週間たって見つかった。男性は介護の必要がない「自立」で介護保険サービスを利用しておらず、施設側は部屋を訪ねるなどの安否確認をしていなかった。
 検証チームは市福祉局長や高齢者福祉の担当者で編成され、今後、弁護士資格のある職員を加えて5~6人とする予定。調査は現場確認やスタッフへの聞き取りが中心で、協力が得られれば入居者からも聞き取る。報告書は公開予定で、厚生労働省にも提出する。

 3日、会見した泉房穂市長は「市民の安全を守る市の責任をしっかりと果たし、再発防止に取り組みたい」と話した。
 同市は今回の施設を含めた市内5カ所の有料老人ホームに対し、入居者の状況確認を毎日行い、一定の頻度で報告の提出を求める通知を出す。さらにサービス付き高齢者向け住宅や軽費老人ホームを含めた計30施設への訪問調査を、6月中をめどに実施する

老人ホーム孤独死 明石市が検証チーム設置 :神戸新聞NEXT

また現場の負担が増えますね。

根本的な原因はそこじゃないですよね。

追記:厚生労働省からも安否確認を求める通知

厚生労働省からも毎日の安否確認を求める通知が発表されています。

今回の事件についての報道については、自立型入所というスタイルについて認識されていないために、有料老人ホーム側へ強い批判が向けられていますね。