広がるインフルエンザの脅威。特別養護老人ホームでの集団感染の責任は

インフルエンザ集団感染は防げるのか

インフルエンザの集団感染のニュースが連日報道されています。

学校だけでなく、高齢者施設での集団感染も増えています。

インフルエンザ集団感染、防ぐことはできなかったか。

インフルエンザ集団感染報道

いくつか記事を紹介します。

 前橋市は23日、同市天川大島町の特別養護老人ホーム「えいめい」(入所者78人)で入所者35人がインフルエンザA型に集団感染し、うち80〜90歳代の男女計5人が死亡したと発表した。
 同市によると、現在3人が医療機関に入院しており、23人が回復したという。発症は10〜17日で、18日以降は新たな発症は確認されていない。


「特養ホームでインフル集団感染、5人死亡…前橋 」Biglobeニュース

群馬の特別養護老人ホームでは35名の感染で5名が死亡。


 秋田県は14日、同県羽後町の特別養護老人ホーム「松喬苑」で入所者や職員ら計53人がインフルエンザに集団感染し、うち入所者の80代の男性2人が死亡したと発表した。「インフルエンザと死亡の因果関係が否定できない」としている。
 施設によると、最初に感染が判明したのは2日。14日までに入所者46人、職員7人がインフルエンザA型と診断された。9日に86歳の男性が心不全で、14日に83歳の男性が呼吸不全で死亡した。他に重症者はいない。

「 インフルで2人死亡 秋田、特養ホームで集団感染 」産経新聞

秋田の特養では入所者職員合わせて53名が感染し、2名が死亡。


 兵庫県は21日、同県淡路市(淡路島)の養護老人ホーム「北淡(ほくだん)荘」(入所者165人、職員28人)で、入所者と職員の計74人がインフルエンザに集団感染し、入所者の男女7人(71〜99歳)が死亡したと発表した。
 北淡荘は社会福祉法人「千鳥会」が運営し、部屋は全て個室になっている。
 県によると、施設の職員が8日にインフルを発症し、9日以降、入所者の発症が続出。11〜21日に入所者7人が次々と死亡した。発症者は、21日までに入所者62人と職員12人に及んだ。
 県は11日に立ち入り調査し、「(発症していない人にも)予防薬を飲ませるように」と指導。施設側は12日、職員に予防薬としてタミフルなどを投与したが、発症していない入所者にはしていなかった。


「老人ホームでインフル集団感染、男女7人死亡」Biglobeニュース

兵庫の特別養護老人ホームでは職員を含む74名が感染し、7名が死亡。

このように、入所者・職員と感染し、死者が複数出る施設も出ています。

中には集団感染した施設の対応について、批判するような報道やコメントなども少なからずみられます

なぜ広がる?特別養護老人ホームのインフルエンザ感染

特別養護老人ホームはご存知の通り基本的には要介護3以上の認定を受けていて在宅で生活することが困難な利用者が暮らす集団生活の場です。

学校との一番の違いは、学校のように学級閉鎖などで感染を完全に防ぐということはできないことです

そこが生活の場だから、逃げる場がないのです。

もちろん、隔離部屋を作るなどして、感染者が他の利用者と接触しないようにするなど、対策はしていたとしていても、対策を取る前に感染は広がっています。

認知症で隔離しようにも動いちゃう人もいますからね。

職員を介しての感染拡大・疲弊する介護職員

集団感染の場合、職員が感染している場合も少なくありません。

職員が私生活で感染し、それを持ち込む場合も多いです。

体調が多少悪くても、ただでさえ人手の少ない特別養護老人ホーム。
責任感から出勤し、それがもとで集団感染をさらに広げてしまうというケースも少なくありません。

感染拡大防止
感染拡大防止

インフルエンザやノロウイルスを発症した利用者がいれば、これ以上感染を拡大させないように排せつ物や着衣の処理や消毒、ガウンテクニックなど、職員の行う業務もめちゃくちゃ増えます。

利用者に集団感染をすると、日常の業務よりもさらに煩雑になり、職員が感染することで職員の人手も足りなくなっていくというダブルパンチ。

残った職員がさらに疲弊していきます。

それでも施設は地域に開かれるべき

持ち込ませないのが一番なのですが、地域に開かれている施設ほど、ボランティアや地域住民、ご家族など、来訪者から感染する危険も増えていきます

集団感染が怖いから、リスク管理のためにと期間中の面会を制限するなどの対策を取るところもあります。

誰だって人間が生活するうえで、家の人と接触することは避けられないわけですし、そこに感染のリスクがあることだって当然のことです。

重篤化しやすいから、集団感染の危険性が高いからと言って、過剰なリスク管理をすることは人として生活する場として望ましいとは思えません

集団感染した施設を叩く報道に

集団感染した施設側の対応を批判するような報道も目にします。

記者会見が開かれ、謝罪に追われる施設。

きちんと対策していたら絶対に集団感染は防げるっていうのならわかるけれど、リスクはゼロにできないでしょう。

予防接種をしていても感染する時には感染するのがインフルエンザ。

感染予防・感染対策マニュアル通りに動いても感染を食い止められないのであれば、施設側の責任を追及するのはおかしい。

介護職員に自分のプライベートを犠牲にして、人と会うな、外に出るな、介護のプロだろ、と求めるのもおかしな話です。

そういった集団感染リスクの高い施設であって、重篤化もしやすいことがもう少し世間に理解されてほしいなと思います。

記事編集・監修

 

介護福祉ウェブ制作ウェルコネクト

居宅介護支援事業所管理者・地域包括支援センター職員・障碍者施設相談員など相談業務を行う。

現在はキャリアを生かした介護に関するライティングや介護業界に特化したウェブ制作業を行う。

インフルエンザ集団感染は防げるのか

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