逆転判決。認知症男性JR事故死、監督義務について、家族の責任なしと判断。その理由は・・・

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<認知症男性JR事故死>「家族に責任なし」監督義務を限定

 認知症の高齢者が列車にはねられ、鉄道会社に損害を与えた場合に家族が賠償責任を負うべきかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(岡部喜代子裁判長)は1日、「同居の夫婦だからといって直ちに監督義務者になるわけではなく、介護の実態を総合考慮して責任を判断すべきだ」との初判断を示した。その上で、家族に賠償を命じた2審判決を破棄して鉄道会社側の請求を棄却した。家族側の逆転勝訴が確定した。

 認知症の高齢者の急増が見込まれる中、介護する家族の監督義務を限定的にとらえた判決で、今後は介護を担う家族が賠償を免れる例が出てきそうだ。

 2007年に愛知県大府市で認知症の男性(当時91歳)が1人で外出して列車にはねられ死亡した。JR東海が「列車に遅れが出た」として、男性の妻(93)と長男(65)に約720万円の支払いを求めた。

 民法は、責任能力のない精神障害者らが第三者に損害を与えた場合、監督義務者が責任を負うとする一方、義務を怠らなければ例外的に免責されると定めている。裁判では、妻と長男は監督義務者に当たるかが主に争われた。

 1審・名古屋地裁は13年8月、長男を事実上の監督義務者と判断し、妻の責任も認めて2人に全額の支払いを命じた。2審・名古屋高裁は14年4月、長男の監督義務は否定したが、「同居する妻には夫婦としての協力扶助義務があり、監督義務を負う」として、妻に約360万円の賠償を命じた。

 これに対し、小法廷は「民法が定める夫婦の扶助義務は相互に負う義務であり、第三者との関係で監督義務を基礎付ける理由にはならない」と判断。一方で「自ら引き受けたとみるべき特段の事情があれば、事実上の監督義務者として賠償責任を問うことができる」とした。監督義務者に当たるかどうかは「同居の有無や問題行動の有無、介護の実態を総合考慮して、責任を問うのが相当といえるか公平の見地から判断すべきだ」と指摘した。

 その上で、「妻は介護に当たっていたが自身も要介護度1の認定を受けていた」と指摘。長男についても「20年以上同居しておらず、事故直前も月に3回程度、男性宅を訪ねていたに過ぎない」とし、いずれも男性を監督することはできなかったと認定した。

 裁判官5人全員一致の意見。岡部裁判長と大谷剛彦裁判官は「長男は事実上の監督義務者に当たる」と述べる一方、「デイサービスを利用する見守り体制を組むなど、問題行動を防止するために通常必要な措置を取っており、責任は免れる」などとする意見を述べた。

これまでも何度かこのブログで取り上げてきた認知症男性がJR東海の電車にはねられ、JR東海から損害賠償を求められた裁判の最高裁判決が出ました。

名古屋認知症徘徊鉄道事故、控訴審判決5割減額。認知症を支える家族の責任と社会の責任。
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今回の判決では、
認知症高齢者の妻は「監督義務者」にあたらないとして、JR東海の訴えを棄却。家族側の勝訴が確定しました。
争点になっていたのは、妻の監督責任についてですが、
監督義務については同居している夫婦だから責任を負うということではなく、
同居していた妻自身も要介護1の認定を受けており、監督義務者としての責任はないという判決がされました。

この判決について、理解しなければいけないのは、
家族に認知症高齢者の監督義務がないということではなく、その状況によって総合的に判断が必要だということです。
このような事故があったとしても、今回の判例通りに家族の責任が免責されるわけではありません。
同居しているのが認知症高齢者の「監督義務者」であれば、こういった事故防止のために
自宅に閉じ込めることもやむを得ないのか。
やはり介護家族にかかる負担は果てしなく大きいという事実は何ら変わりないのです。

今回の事故でJR東海が受けた損害は振替輸送の費用負担や人件費など合わせて720万円ということですが、
やはり事故によって社会的な損失を受けている事実は間違いなく、
在宅介護に携わるものとしてはこのような事故が起こる前に何らかの方法をとることができなかったのか、
やはり振り返ることは必要ではないでしょうか。

追記

この一件をきっかけに、認知症保険が広まっています。
認知症によるトラブルについて煽るような報道なども目にします。

こちらの記事で認知症保険についてまとめてみました。

記事編集・監修

 

介護福祉ウェブ制作ウェルコネクト

居宅介護支援事業所管理者・地域包括支援センター職員・障碍者施設相談員など相談業務を行う。

現在はキャリアを生かした介護に関するライティングや介護業界に特化したウェブ制作業を行う。